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クーが図書館へと去った後、私たちは魔法の実技をする為に運動場へと向かった。
「お姉ちゃんは、いつもあんな感じなんですか?」
その道中、クーの妹である、リーフィアが話しかけてきた。
「そうねぇ…まぁ、大体あんな感じね」
「そうなんですか……」
あら。この反応を見るあたり、クーはあまり学園でのことを詳しく話していないみたいね。
「はぁ…この学園のAクラスが、お姉ちゃんにとって居場所が良かったなら、押し込むのに」
……押し込むって、なかなか凄い考え方をするのね。
でも、クーにとって居場所がいい、か……確かに、Aクラスはクーにとって居場所がいい所ではないわね。貴族が多いから、『白』であるクーは蔑まれるでしょうし。
「まぁ、クーはクーでこの生活を満喫してるみたいだし?」
「それは見てて思いますけど……正直お姉ちゃんにとってGクラスに通うくらいなら、もう学園に来る意味ないんですよね」
「そ、そうなの?」
確かにクーはとても頭がいいけれど……
「あれ、お姉ちゃん言ってないんだ」
「え、何を?」
「うーん…お姉ちゃんが言ってないのなら、私の口からは言えません」
…それもそうね。今度クー自身の口を割らせましょう。
話しているうちにいつもの運動場へと着いた。
「よし。今日の座学で行った魔力計算をもとに、魔法の行使を練習するぞ」
今日の座学で習ったのは、中級魔法の魔力計算。私たちが以前対抗戦で使っていたのは、全て初級魔法。今回が中級魔法の、初めての行使になる。
「それぞれの得意な属性で集まってしろよ。ただし、俺の目が届く範囲で練習すること。試し打ちはあの的にやれよ。決して人に向けるなよ!」
マンセル先生が言う的とは、訓練柱と呼ばれる的。魔法の威力を測定することが出来る魔道具で、学生程度の魔法ではビクともしない。
「「「「はーい」」」」
全員が声を上げる。さてと…どうしようか。私の得意な属性は火と風だけど、今回はリーフィアに合わせましょうか。
「リーフィアはどの属性が得意?」
「えっと…一応無なんですけど……」
無、かぁ……それは少し厳しいな。私は出来るけど、2人だけで練習するのは目立つし。
「他は?」
「そうですね……強いて言うなら、水でしょうか。特に氷が」
氷……もうその魔法を使える時点で、リーフィアは中級魔法を使いこなせていることが分かる。氷は水の属性の上位互換。使うにはそれなりの技術が必要だからだ。
「…とりあえずここで氷は禁止ね」
「わかってます。これ以上注目集めたくないですし」
まぁねぇ…周りを見れば、かなりの視線が集まっているのを感じるし。
「じゃあ水にいきましょうか」
「はい」
10人程度の水のグループと合流する。すると案の定
、リーフィアは質問攻めにされていた。教室ではクーと話していたから、質問する機会がなかったのよね。
「おーい。早くしないと時間無くなるぞー」
マンセル先生の声が届き、質問は一時中断された。
「ふぅ…」
「お疲れ様」
私は質問攻めで疲れた表情をするリーフィアへと話し掛けた。
「はい…まさかここまでとは」
「まぁね…飛び級生だからってこともあるだろうけれど、それに加えて【天使】の妹だからかな」
「?【天使】とは?」
「…クーのことよ。一部の間では【天使】とか、【蒼銀の天使】だとか言われてるわ」
クーはこのこと知らないみたいだけど……
「そんな呼び名が……まぁ、見ていて不思議な印象などは与えると思いますが… 」
そう。それが一番の理由だ。クーには秘密が多い。謎要素が多いからこそ、【天使】などと呼ばれているのだ。
「でも、妹であるあなたも、クーのことを不思議だと思うの?」
「そうですね……はい。お姉ちゃんは自分のことを全然話してくれませんから……まだお兄ちゃんよりかは話してくれてるみたいなんですけど」
「そうなのね…」
…しかしクー、ちょっとは家族との交流を増やしたほうがいいと思うわよ?
「(……話さないのなら、無理にでも聞き出そうと思ってたのに……お姉ちゃん、飲んでない。気付かれたか……)」
「え、なに?」
「なんでもないです」
そうかしら…無理に聞き出すとかって聞こえた気がしたんだけど……
「早くやりましょう、時間がありません」
「え、ええ。そうね」
確かにもうあまり時間はない。早く練習しないと……。
……でも、クー。今回も遅れないかしら……




