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出来損ないと呼ばれた伯爵令嬢は出来損ないを望む  作者: かぐや
学園 高等部一年 対抗戦編
59/136

54※

 クーの部屋へと戻ると、そこにはクーのお母さんだけがいた。おそらく兄妹は学園、お父さんは仕事にいったのだろう。今日は休日ではないからね……。


「あら、確か……サラちゃん?」

「はい。今回は本当に……すいませんでした」


 わたしは頭を下げる。


「何故、あなたが謝る必要があるの?」

「……もっとわたしがはやくに気付いていれば、こんなことには……」

「それは無理な話よ。それより、クーが無事だった。手遅れにはならなかった。それだけで、十分よ」


 ……そうだ。わたしは自分で言ったんじゃないのか。たらればの話でしかないと。


「ほら、こっちにきて?」

「………はい」



 手招きされて、クーの元へと寄る。規則的な呼吸の音が聞こえ、顔色も良かった。それをみて安心する。

 クーは一応すぐに医者にみせた。精神的に身体的に消耗が激しいだけで、暫くは安静に寝かせておけば大丈夫。そう言われたけれど、やはり心配だった。


「わたしは少し席を外すわね」

「はい」


 クーの顔を覗く。こうしてクーの無事な姿を見るまで、本当に怖かった。


「本当に良かった……」


 視界が滲む。


「クゥーン?」


 可愛らしい鳴き声が聞こえたと思ったら、したからあの子狼がでてきた。


「…あなたがあそこでクーを助けてくれたの?」

「ワフッ!」


 言葉が通じているのだろうか。まるで返事をするかのように鳴く。


「ありがとう」


 毛並みを優しく撫でた。逃げるかと思ったけれど、撫でさせてくれる。とても気持ちよかった。








 そしてクーが目覚めたのは、誘拐から5日後のことだった。


「わたし、そんなに寝てたの?」

「そうよ。ほんとに心配したんだからね?」


 このまま目を覚まさないんじゃないかって、ものすごく心配した。当の本人はキョトンとしてるけど。


「……ねぇ、クー?」

「うん。聞きたいこと、あるんだよね?」


 ……ほんと、クーには敵わないなぁ。


「……うん。聞かせてくれる?」

「もちろん!……まぁ、わたしもそこまで覚えてないけどね」


 そう前置きして、クーがなぜ自分が誘拐されたのかを話してくれた。


「力を……」


 思わず手を強く握りしめる。そんなことをしようとしていたなんて……


「まぁリーヴォが助けてくれたから大丈夫だったよ」

「……リーヴォって、その?」


 わたしは目線を、ベットに座るクーの膝にのる子狼へと向ける。


「そう。わたしの……契約獣?になるのかな」

「いつ契約したの?」

「えっと…6日前?」

「……それって誘拐される前日じゃないの」

「まぁ、そうだね。そのおかげで助かったけど」


 軽くクーが言うけれど、もし契約していなかったら今ごろクーはここにいなかったかもしれないのよね……。奇跡、とでも言うのかしらね。


「……ところで、クーの左目ってそんな色だった?」

「え?」

「あ、ちょっとまって」


 わたしは部屋にある机の引き出しから手鏡を取り出し、クーへと手渡す。

 その手鏡をクーが覗くと……


「……違うね」

「やっぱり?」

「うん。前より……ちょっとだけ濃くなってる?かな」


 本当に少しだけだけど、クーの左目の薄い青が濃くなっている。やっぱり気のせいじゃなかったのね……。


「なんでかな?」

「うーん…まぁ、大して気にしないでいいと思うよ。体調とか、変わんないし」

「…それもそうだね」


 もしかしたらこのまま濃くなって、両目同じ色になったり……いや、それはそれでなんとなく残念に思うわたしがいる。目の色が違うのも、クーの良さだと思うからかな。


「とりあえず今は大事をとって寝てなさい」

「えー…」


 クーが不服そうな声を零す。起きてから寝かせられ、休まさせられてばかりで、全然動いていないからだろう。


「明日には許可出ると思うから」

「そっか。ならいいや」


 ……切り替え早いわね。まぁ駄々こねられるよりましだけど。


「おやすみ」

「おやすみ」


 クーの頭を撫でる。するとすぐに規則的な寝息が聞こえだした。ふぅ……クーの話をお父様に伝えなきゃいけないわね。


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