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出来損ないと呼ばれた伯爵令嬢は出来損ないを望む  作者: かぐや
学園 高等部一年 対抗戦編
58/136

53※

 クーはわたしの家(屋敷)へ寝かされることとなった。すぐにクーのお母さんやお父さん。兄や妹がくる。全員が泣きそうな顔で、でもクーが無事だと分かって安堵していた。


「クー……」

「お姉ちゃん……」


 皆が心配そうにクーの寝顔を覗く。あの子狼はクーのベットの下でうずくまっている。


 ……そういえばクーの妹に会ったのは初めてね。容姿は兄2人に似ている。とはいえ髪色がクーと違うだけで、顔立ちはよく似ていた。そしてクーより、ちょっとだけ身長が低いかな。

 ………そのうちクー、抜かされちゃうんじゃないかしら。まぁ、クーに言ったら泣きそうだから黙っておくけど。

 

 わたしはクーの家族の時間を作るため、クーが寝ている部屋を後にした。


「ありがとうございます…」


 去り際にクーのお父さんからそんな言葉をかけられた。

 

「いえ、わたしは…」


 わたしは間に合わず、クーを危険な目にあわせた。感謝されるなんておこがましい。もっと早く気付いていれば……。そう思っても所詮はたらればの話だ。悔やんでも時間が戻りはしない。だから、なぜこんなことが起きたのかを調べる必要がある。


「お父様」

「ああ、サラか。いいのか?」

「はい。今は家族の時間ですから」

「そうか……本当に聞くのか?」

「もちろんです。わたしの…親友になにがあったのか。知らない訳にはいきません」

「……分かった」


 聞かせたくない。そんな想いがひしひしと伝わる。だけれど、わたしは聞かなきゃいけない。


「まず、あの屋敷からなんだが…なにも出なかった」

「……なにも?」

「そう。なにもだ。あそこで何が行われていたのかという記録や痕跡。さらに……メンティス自身の姿もなかった」


 メンティスが姿を晦ますのはまだ分かる。けれど、全ての記録や痕跡を抹消することなど不可能だろう。証言はないけれど、おそらくわたしが駆けつける直前までいたはずだろうから。


「ほんとになにも?」

「ああ。()()()()()()な」


 不自然なほどに、か……。


「……信じたくはないが、もしかしたら…」


 わたしはその先に続く言葉が分かった。


「クーが、そんなことをするとでも?」


 思わず怒りがこもった声がでる。クーは被害者なのだから。そんなことをするはずがない。そもそもクーは気絶していたのだから、そんなことを出来たとも思えない。


「もちろんそんなことはないと分かっている。…とりあえず屋敷を探し続けているが、未だ何か見つかったという報告はない」

「そうですか……」


 誘拐したのはメンティスで間違いない。あの屋敷には彼しかいなかったのだから。でも証拠がない。本人もいない。完全に詰んでいるわね…。


「報告はそれだけだ。……そばにいてあげたらどうだ?」

「……はい」


 わたしはお父様に一礼すると、クーが眠る部屋へと早足で向かった。


 

 

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