表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
出来損ないと呼ばれた伯爵令嬢は出来損ないを望む  作者: かぐや
学園 高等部一年 対抗戦編
57/136

52※

 対抗戦が開始する直前、わたしにひとつの連絡が入った。それは、クーリアがどこにもいないという連絡だった。


「家に、いなかったんですか?」

「ああ。確かに学園に向かったそうだ」


 マンセル先生の言葉に嘘はないだろう。なら、クーリアは何処へ……。


『サラ』


 ここでもうひとつの通信具から声が聞こえた。お父様の声だ。


「お父様、どうしたんですか?」

『ああ。クーリアの居場所についてだ』


 わたしは驚いた。なぜお父様がクーリアの居場所を……?いや、それよりも、


「どこにいるんです!?どこに!」

『ちょっと落ち着きなさい』


 落ち着いてなんていられない。お父様からクーのことを聞くことになるってことは、それだけの重大なことが起きていることと同義なのだから。


「…すいません。それでどこに」


 1度深呼吸して、再度問いかける。


『まだ分からない。ただ、男2人組がクーリアらしき人物を連れ去っていくのを見たという証言があった』

「……それじゃあ」

『ああ。クーリアはおそらく誘拐されたのだろう』


 なんで……いや、クーの容姿なら確かに高く売れるかもしれない。でも、学園生を攫うなんてそれこそ国を敵に回すようなもの。国立だからね。だからただの人攫いとは考えにくい。……まぁそれを知らないやつかもしれないけれど。


『今全力で探している。…国を敵に回すことを恐ろしさを教えてやらねばな』

「…はい。お願いします。一刻も早く」

『分かっている』


 そこで通信は切れた。待っていれば絶対見つかるだろう。けれど、待ち続けるなんてできはしない。


「マンセル先生」

「あぁ、聞こえてたよ。まったく……いつも世話の焼けるやつだ。……行くんだろ?」

「はい……すいません」

「大丈夫だ。それより、お前の方こそ気を付けろよ。襲われても心配はいらんだろうが…」

「分かっています。じゃあ」


 わたしは時間が惜しくて、すぐに学園を後にした。ヴィクターやイルミーナも当然のように手伝うと言ってくれた。


「あいつが問題を起こさないことはないな、ほんとに」


 そう軽口を叩くけれど、ヴィクターの表情からは心配していることがよく分かる。それはイルミーナもだ。


「ここか?」

「ええ。ここが証言にあった場所よ」


 わたしはクーリアが攫われたという場所に到着した。


「じゃあ俺はこっちから」

「ボクはこっちからいくよー」

「分かったわ。気をつけて」

「「もちろん」」


 手分けして探すことにする。ヴィクターとイルミーナが走り去った後、わたしはしばらくその場で痕跡を探すことにした。僅かでもいい。なにか、痕跡が……




「うわっ!?な、なんだこの魔獣は!?」 


 探していると、遠くからそんな叫びが聞こえた。街中に魔獣……?ありえないとは思ったけれど、とにかく気になってしまったので、行ってみることにした。


「うわぁ……」


 結論から言うと……いた。大きな、銀色の狼が。でも、魔獣……かなぁ?なんとなく違う気がした。

 そうこうしているうちに、銀狼は走り出してしまう。わたしはなんとなく、その銀狼の後を追いかけることにした。けれど足が速くて、とてもじゃないけど追いつけなかった。


「はぁはぁ…」


 とうとう見失ってしまう。けれど、騒ぎ声から今どの辺りにいるのかを大体把握することができた。


「こっちっ!」


 しばらく騒ぎ声を頼りに走り続けていると、少し離れたところで轟音が鳴り響いた。


「な、なにっ!?」


 わたしは今までで1番速いんじゃないかってぐらいのスピードで、轟音が起きたと思われる場所へと急いだ。


「ここって……」


 たどり着いたのは、大きな屋敷。わたしの家より小さいけれど、それでも貴族が住む建物だ。しかも、わたしはここに誰が住んでいるのか知っていた。


「マルコス家……」


 そう。クーに難癖をつけ、今回の対抗戦で不正を手伝った人物がここに住んでいた。


「ここから聞こえたわよね…」


 人がいないようなので、勝手に中へとはいる。すると屋敷の壁が半壊している箇所を見つけた。

 そこから覗くと、どうやら地下室に続いているようだった。


 わたしは十分に警戒しながら、地下室へと降りていった。薄暗くて見づらかったけれど、地面に倒れるクーの姿を見つけることができた。


「クー!!」


 思わず駆け寄る。けれど、そんな私の前にあの銀狼が立ち塞がった。まるで、クーのことを守るように。


「グルル…」


 明らかに敵意むき出し。なぜ銀狼がここにいるのか。なぜクーのことを守っているのか。気になることはいっぱいあったけれど、今はクーのことのほうが大切だ。


「どいてっ!」


 わたしは銀狼を睨みつける。今思えばわたしかなり肝据わってたわね……。


「ワフッ」

「グルル…」


 銀狼の足元から小さな銀狼が姿を現した。なんだろう……どことなくクーに似てる。

 子狼となにかを話したと思えば、銀狼は道を開けてくれた。


「クー!」


 クーの元へと駆け寄る。手足に拘束されたような赤い跡があったけれど、それ以外に目立った怪我はなかった。呼吸もちゃんとしてる。


「良かった…」


 その場に崩れ落ちる。が、すぐにお父様に連絡した。今休まなきゃいけないのはわたしじゃない。クーなのだから。

 幸いすぐに人が来てくれた。けれど、気付いたときには銀狼の姿はなかった。いたのは子狼のみ。その子狼はクーから離れようとしなかった。多分だけれど、この子はクーの契約獣じゃないかと思ったので、一緒に連れていくことにした。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ