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出来損ないと呼ばれた伯爵令嬢は出来損ないを望む  作者: かぐや
学園 高等部一年 対抗戦編
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50

「え……?なんで…」


 クーリアはいきなり現れたリーヴォに混乱状態だ。それもそうだろう。リーヴォはクーリアの家にいたはずなのだから。


(あ…そう言えば…)


 クーリアは意思の共有という現象を思い出した。


「……呼んだ、から?」

「アゥ!」


 どうやら正解のようだ。


「…ありがとう」


 クーリアが思わず感謝の言葉を零す。リーヴォは当然だとでも言うように、クーリアの膝へとよじ登り、頬に擦り寄った。


「な、なんだその獣は!?」


 メンティスが驚く声が響く。ここでようやく、クーリアはもう一体の存在に気づいた。

 メンティスを睨みつけるようにクーリアに背を向けて立っていたのは、リーヴォよりも大きな、銀色の体。そう。クーリアが森で助けた銀狼だった。


「グォォォン!!」


 ビリビリと空気が震える。その遠吠えだけでメンティスは気絶寸前になった。だが、クーリアが怯えることはなかった。

 ──()()が来た。そう思ったからだ。


(え?今、なんで……)


 クーリアは、自分がなぜ銀狼のことを仲間だと思ったのか分からなかった。クーリアがそのことで混乱しているうちに、銀狼はメンティスへと詰め寄っていく。


「ワフッ!」

「え?」


 リーヴォが鼻先をコツンとクーリアについた首輪にあてる。すると、パキンッと音を立てて、首輪が真っ二つになり、地面へと落下した。


「外してくれたの?」

「アゥ!」


 リーヴォは次々とクーリアを縛り付けていた拘束具を破壊していく。そしてとうとう、クーリアは自由となった。


「ありがとう」


 クーリアは自分の脚で立ち上がる。だが、ふらついて思わず倒れそうになる。しかし、地面に衝突する痛みは感じなかった。感じたのは、柔らかな感触。


「……あなたは」

「グルル…」


 クーリアの下へと滑り込んでいたのは、銀狼だった。気恥しいのか顔をそらす。


「ありがとう」


 クーリアは銀狼の体を支えに立ち上がり、目線を倒れ込んでいたメンティスへと向ける。


「お、お前は一体なんなんだ!」


 メンティスが怯えた表情をする。確かに客観的に見たら、かなりカオスな状況である。


「わたしはわたし。それ以上でも、以下でもない」


 クーリアが返答する。だが……その口調はクーリアのものではなかった。

 確かにクーリアの口からでた言葉であるが、まるで喋っているのは、別人のようだったのだ。


「そなたは禁忌を侵した。わたしはその裁きを受け持つ者」


 淡々と言葉を紡ぐ。


「さ、裁きだと!?ふざけるな!何が悪い!力を求めることのなにが!」


 メンティスがクーリアへと襲いかかる。銀狼が動こうとするが、それをクーリアが手で制する。そして片手を横に振るった。それだけで、メンティスが壁へと叩きつけられる。


「がはっ!」

「哀れな……」


 クーリアが片手をメンティスへと向ける。


「……せめて安らかに」


 それだけを呟き、クーリアの口が呪文を紡ぎだす。


『…………………』


 それは()()()()()()()()()()()。すると次第にメンティスの周りに真っ白な光が集まり出す。


「なっ!なんだこれは!?」


 メンティスが振り払おうとするが、光は着実にメンティスの体を包んでいく。その光は地面に書かれていた魔法陣すらも飲み込んでいく。やがて喚き散らすメンティスの声も聞こえなくなり……光が無くなったその場には、何も、残らなかった。







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