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出来損ないと呼ばれた伯爵令嬢は出来損ないを望む  作者: かぐや
学園 高等部一年 対抗戦編
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46

「…理由としては、わたしがその子の世話をする時間がないということかしらね」


 女性の口から出てきた言葉は、考えた割にはとても軽いものであった。


「時間がない…?」

「ええ。まぁ、それは建前でしかないのだけれどね」

「……なら、本当の理由は?」

「んー?んー…教えない。でも、あなたに悪いことではないから、安心して」

「それは心配してないですけど…」

「あら、嬉しい」

「どうしても教えてくれませんか?」

「だって教えたらあなたは断りそうだから」


 その言葉を聞き、クーリアが顔を顰めた。


「……わたしが断るような理由なんですか?」

「ええ。()()()()()ね。でも、わたしはそれを望まない。だから、教えない」

「………」


 どうしても教えるつもりは無いようだ。


「わたしが断る理由……なら」

「あ、言っておくけど、その子もうあなたから離れるつもりないみたいよ?」


 確かに子狼はクーリアにがっちりと抱きついており、離すつもりはなさそうであった。


「……元から強制じゃないですか」

「ふふっ。そうね。あなたは優しいから」


 真正面から優しいと言われ、クーリアは気まずくなり顔を逸らした。


「その子に名前を付けてあげて?」

「名前……」


 クーリアが子狼を見つめる。子狼もまた、青い瞳でクーリアを見つめる。その瞳には、期待の色が浮かんでいるようだった。


「……"リーヴォ"」


 クーリアが子狼の名前を呟く。それと同時に、クーリアと子狼の頭上に光の輪が現れ、パチンッと弾けた。


「うん。()()完了ね」

「契約…?」

「あら、知らなかったの?魔獣に名前を与えて、魔獣自身がその名前を受け入れたなら契約できるの。さっきの光の輪がそうね」

「契約したら何かあるんですか?」

「んー、あなたは親和性が高いから、お互いの意思を共有したり、居場所を把握することが出来るんじゃないかしら?」

「意思の共有…?」

「ええ。まぁ、簡単に言ったら、離れてても相手が自分を呼んでいる事が分かるっていうことよ」

「へー…」


(確かに繋がった?みたいな感じがする。でも、言葉が聞こえたりする訳じゃないのか…)


「あぁー…うーん。まぁ長く連れ添えば自然と分かるようになるわよ」

「そういうものですか…あ、ご飯は?」

「基本要らないわよ?あなたの魔力さえあれば、ね」

「魔力だけ、ですか?」

「そう。試しにあげてみなさい」


 言われた通り、子狼…リーヴォへと魔力を流す。すると、リーヴォの体が一瞬だけ光った。


「うわっ!?」


 驚いたものの光が収まってから見てみると、少しリーヴォの姿が変わっていた。体毛が銀色から、ちょうどクーリアの髪色と同じ青みがかった銀色へと変化していた。


「え?」

「うん。それで魔力が同調したわ。お互いの魔力を分け合えるようになった」

「お互いの魔力…」

「そ。あなたの魔力が無くなればリーヴォから。リーヴォの魔力が無くなればあなたから」


 それ聞いて、クーリアはもう一度リーヴォを抱きしめた。大切なパートナーであると、より認識できるように。


「じゃあわたしはもういかなきゃ」


 そう言って女性は銀狼へと跨る。


「あ、あの!」


 行こうとする女性をクーリアが引き止めた。


「どうしたの?」

「…また、会えますか?」

「ふふっ。そうねぇ…じゃあ満月」

「満月…?」

「満月の夜。ここで会いましょう」


 夜、と聞いてクーリアが悲しそうな、悔しそうな顔になる。


「夜は…外に出れないので」

「あら。わたし、()()()()()なんて言った?」

「…っ!」


 クーリアが息を飲む。女性の言葉。それはつまり……クーリアがここに長距離転移することができるということを、女性は分かっているということだったからだ。


「な、なんで…」

「ふふっ。秘密よ。じゃあね」


 その瞬間、女性の姿が掻き消える。だが、クーリアはどうやって消えたのかが分かった。分かってしまった。


(長距離…転移…)


 そう。女性が使ったのは、長距離転移の魔法だった。しかも、自分とは比べ物にならないほど高度な。


「一体、あの人は…」


 しばらくの間、クーリアは驚きと困惑から、その場から動けなかったのだった……。


 

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