表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
出来損ないと呼ばれた伯爵令嬢は出来損ないを望む  作者: かぐや
学園 高等部一年 対抗戦編
50/136

45

 しばらくして、女性が帰ってくる。その腕には、何かが抱かれていた。


「それは…?」

「この子は子供よ。この狼のね」


 よく見ると、確かに目の前の銀狼を小さくしたような姿の狼だった。目を閉じて、気持ちよさそうに眠っている。


「抱いてみる?」

「い、いいんですか?」


 そう言いながらも、クーリアの目線は女性に抱かれた狼に固定されていた。


「ええ。はい、気をつけてね」


 おずおずと、まるで壊れ物を扱うかの如く、その小さな狼を抱き込む。


「…かわいい」


 思わずクーリアが呟いた。子狼はその声を聞いたからなのか、その目を開いた。

 顕になった瞳は……クーリアの右目と同じ、深い青い瞳であった。


「クゥーン?」

「…っ!」


 子狼が首を少し傾げながら鼻を鳴らす。それだけでクーリアはもうメロメロになった。


(可愛い過ぎる……)


「ふふっ。どう?」

「とっても可愛いです…はぅ…」


 子狼に夢中になるクーリアだったが、ここである違和感に気づいた。


「……軽い?」


 そう。大きさ的には、クーリアが両手で抱えるほどなのに、その大きさにしては、あまりにも軽かったのだ。

 さらに言うと、クーリアは自身が非力であることをよく理解していた。そんな自分でも持つことができた。その時点でおかしいのだ。


「気付いた?」

「は、はい…どうしてですか?」

「どうして、と聞かれると答えにくいのだけど……そうねぇ。普通の魔獣ではないから。かしら?」

「普通の、魔獣ではない…?」


 クーリアは自分が抱えている子狼を見つめる。

 見つめられた子狼は、「なに?」とでも言いたげな様子でクーリアを見つめ返した。


「ええそう。それでね、その子をあなたに託してもいいかしら?」

「託す…?わたしにですか?」

「ええ。見たところ相性はいいようだし」

「そうですか?」

「その子が逃げようとしていないのがその証拠よ。人見知りだからね」


 確かに子狼はクーリアの手から逃げようとはしていない。むしろ自分からクーリアに前足で抱きついていた。

 そんな様子を見て、クーリアが頬を弛める。けれど、どうしても気になったことがあったために、顔を引きしめて女性へと向き直った。


「どうしてわたしに託すんです?」


 女性は相性が良いと言った。しかし、それはクーリアに託す理由にはなり得ない。そもそも子狼の親の狼の飼い主なのだから、女性自身が世話することもできるはずだ。なのに何故クーリアに託すと言ったのか。クーリアは、それがどうしても気になった。

 女性はその言葉を聞いてしばらく考え込む仕草をする。

 そして少しの時間が経ち、その口を開いた。



 



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ