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出来損ないと呼ばれた伯爵令嬢は出来損ないを望む  作者: かぐや
学園 高等部一年 対抗戦編
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 クーリアはサラたちと別れ学園を出て、そのまま家へと向かった。


「ただいま」

「おや、今日は早いね」


 祖母が出迎えた。どうやら祖父は奥で追加のパンを焼いているところのようだ。


「色々あってね。早く帰ってこれたから出かけるつもり」

「そうかい。じゃあ好きなパン持ってきな」

「うん。ありがとう」


 祖母はクーリアが出かけると聞き、昼食として好きなパンを選ばせることにした。幸運なことに、全てのパンが焼きたてであったので、クーリアは嬉嬉として好きなパンを選んだ。


 鞄にパンを入れて、制服から普段着に着替え、クーリアは家を後にした。





 クーリアが家を出て向かったのは、外壁の門だった。

 コルメリア王国の王都であるここは、周りを壁に囲まれており、外に出るための門が四方に設けられていた。そのうちのひとつにクーリアは到着した。


「すいません。出ていいですか?」


 門番の男に話しかける。


「…お前さん1人か?」

「はい。これ通行証です」


 外に出るためには通行証が必要になる。通行証は住民なら絶対に持っているもので、身分証でもある。


「あぁ…別にいいが、日が暮れる前に帰ってこいよ?」

「分かってます」

「ならよし。気をつけてな」

「はい」


 門番の男が日暮れまでに帰ってこいと言ったのには理由があった。

 外には魔獣と呼ばれる人を襲う生き物が生息しており、夜になると活動が活発になるため、日暮れまでに帰らないと危険なのだ。そのためクーリアに日暮れまでに帰ってこいと言ったのである。


 外に出たクーリアは、しばらく道なりに進み、途中の森へと入った。

 森には魔獣が生息しているため危険ではある。だが、クーリアは魔力を広げて周りの警戒を怠っていないので、襲われる危険はほぼないと言えた。



「グルル……」


 ……だが、言ったそばからこれである。

 気づかなかったのか、クーリアの目の前に大きな銀色の狼が現れた。

 目の前にいきなり魔獣が現れ、クーリアは驚き怯える……様子などは全く無かった。あれ?


「こんにちは」

「ガルゥ…」


 どうみたって警戒されている。だが、クーリアは怯えることなく、銀狼に近づいて行った。

 そして銀狼がクーリアに噛み付くっ!……のではなく、クーリアが差し出したパンに噛み付いていた。


「美味しい?」

「……グルル…」


 素直じゃないのか、銀狼が目を逸らしながらも返事するように喉を鳴らした。

 そんな銀狼の様子に少し笑みを浮かべながら、クーリアも銀狼の隣りへ腰掛けてパンを食べ始めた。


「足の調子はどう?」

「………」


 返事はない。なのでクーリアは勝手に後ろ足を触った。普通こんなことをしたら頭から食べられそうだが、銀狼がそんなことをすることはなく、されるがままであった。


「うん。大丈夫そうだね」

「………」


 返事はせず、銀狼は尻尾をクーリアに巻き付けた。どうやら感謝しているらしい。

 

「ふふっ。どういたしまして」


 クーリアは巻き付いてきた尻尾を優しく撫でた。

 

 クーリアがなぜ銀狼の足を気にしたのか。それは数日前にあった、ある出来事まで遡る………


 

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