36
次の日。クーリアは自分の部屋で四苦八苦していた。
「こ、ここ?」
その理由は…イヤリングの付け方がよく分からなかったからだ。ここにきて装飾品を身につけなかったことが悔やまれる……ことはないが、聞いておけば良かった、と少しばかり後悔するクーリアであった。
そして鏡を見ながら、時間がかかりつつも、何とかイヤリングを付けることができた。
「ふぅ……あっ!」
付け終わり安堵しながら時計を見ると、もう既に家をでないと間に合いそうにない時間になっていた。
「クー、ご飯は!?」
フィーリヤがクーリアに尋ねてくる。
「時間無いからいい!」
一分一秒も惜しいので、クーリアは朝ごはんを食べず、鞄を持って、学園へと走った。
「はぁはぁ…間に合った…」
全速力で走って、なんとか朝礼開始2分前にクーリアは教室へとたどり着いた。
「クー、おはよう。あなたが遅れるなんて珍しいわね」
「おはよう。うん……イヤリングの付け方がね…」
サラがそんなクーリアの言葉に苦笑した。
「まぁ昨日わたしが付けたものね…ごめんね?」
「ううん。わたしが聞かなかったのが悪いから」
そもそもサラはイヤリングの付け方をクーリアが知らないとは思わなかったのだから、サラが昨日言わなかったのは無理もない。
そんな会話を交わしたところで、担任の先生が入ってきて朝礼を始めた。
「よし。全員いるな。今日は対抗戦準決勝だ。このクラスで残ってるのは……サラのチームだけか」
だけではあるが、Gクラスでひとつでも残っていること自体がありえないので、凄いことだったりする。
「頑張れよ。特に、クーリア」
「………なんでわたしなんですか」
「1番楽してるから」
その言葉を聞き、サラの顔が怒りに染る。
確かに一見するとクーリアは何もしていないように見える。だが、クーリアがいるからこそ、クーリアが守ってくれるからこそ、サラ達が攻められるのだ。
「先生っ!いくらなんでもそれは」
「サラ」
今にもここから先生にむけて魔法を使いそうなサラをクーリアが止める。
「でもっ!」
「いいの。別に」
それでもサラは言おうとしたが、クーリアが微力の魔力を放出し威圧してきたので、仕方なく黙った。
「あぁ…まぁ、すまん。ちょっと言葉が悪かったな」
「大丈夫ですよ。ホントのことですし」
クーリアが答えると、クラスに笑いが生まれる。その笑いは面白がるような、蔑むような、そんなものだった。
「(クーっ!)」
「(黙って)」
もしクーリアが居ない時にこんな状態になれば、サラはこの教室を火の海にしていたかもしれない……。




