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出来損ないと呼ばれた伯爵令嬢は出来損ないを望む  作者: かぐや
学園 高等部一年 対抗戦編
40/136

35

 それからクーリアは、サラの父親と昼食を共にした。


「そういえば、お母様は?」

「まだ仕事がある。だが、夜には帰れるそうだ」


 その返答を聞いて、サラが嬉しそうにする。

 なぜなら、両親がそろうことなど最近ほとんどなかったからである。


「じゃあわたしはこの辺で…」


 親子水入らずの時には邪魔であろうと判断し、クーリアは帰ることを告げた。


「あぁ。すまんな。もっとゆっくりして行ってもらいたかったが…」

「残念だけど……じゃあ玄関まで送るね」


 そしてサラの父親に別れの挨拶をし、サラと共に屋敷の玄関へと向かった。


「あ、そうだ。クー、これあげる」


 そう言ってサラがクーリアに渡したのは……片耳分のイヤリングだった。装飾などはなく、透明な小さい石が付いているだけのシンプルなもの。


「なにこれ?」


 どこからどうみてもイヤリングではあるが、サラが普通のイヤリングを渡すなど考えられない。

 ……まぁ普通のイヤリングをサラが渡すとしたら、装飾が綺麗などう見ても高価なものになるだろう。


「これは通信具よ」

「通信具?」

「そう。わたしのものと一対になっていて、魔力を流せばいつでも、どこでも会話できるの」


 通信具はかなり広まっている道具ではある。現にクーリアも母親…フィーリヤと通信できる通信具を持っている。

 だがそのことから分かるように、難点は決まったペア同士でしか通信できないということだった。

 なのでサラは、クーリアに新しい通信具を渡したのだ。

 ……だが、疑問点はそこではない。


「なんで今これを?」


 そう。何故()渡したのかということが疑問なのだ。


「……明日、もしかしたら()()()()()かもしれないの」


 その言葉だけでクーリアはすべてを理解した。


「分かった…じゃあ明日は付けとくね」

「その…できるならいつもつけて欲しいなぁ、なんて…」


 そもそもいつも身につけなければ、通信具を持っている意味がないのだが。


「…分かった。じゃあ付けて?」

「分かった!」


 サラが妙に嬉しそうにする。なぜならクーリアは、基本そういった装飾品を身につけないからである。


(絶対付けたほうが可愛いのに!)


 サラはクーリアを可愛くしたいらしい……。


(はた迷惑な……でも、まぁ…サラからならいっか)


 なんだかんだ言って、クーリアも満更ではないようであった……。


「うん。似合うよ。お揃いだね」


 サラが耳にかかった髪をあげ、右耳についたイヤリングをクーリアに見せた。ペアなのだから、お揃いなのは当然なのだが。


「そうだね。ありがとう」

「どういたしまして」

「じゃあバイバイ」

「うん。バイバ──ちょっと待ちなさい」


 帰ろうとしたクーリアの首根っこをサラが掴む。


「な、なに?」

「これ、忘れてないよね?」


 サラが紙袋を差し出す。その中身は…昨日クーリアが寝る時に着せられた服であった。


「うっ!」

「やっぱり分かってて帰ろうとしたのね!?」


 当然である。


「はい、ちゃんと持ちなさい」

「……分かったよ」


 渋々クーリアはサラから紙袋を受け取った。


「じゃあまた明日」

「……うん。バイバイ」

「バイバイ」


 そう言って今度こそ、クーリアはサラの(屋敷)を後にした。




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