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出来損ないと呼ばれた伯爵令嬢は出来損ないを望む  作者: かぐや
学園 高等部一年 対抗戦編
35/136

30

 サラから着替えを受け取ったクーリアは、その服に袖を通して、すぐにそれが高いものだと悟った。

 なぜなら、普段クーリアが使うものとは、比べ物にならないほど肌触りがよかったのだ。


「サラ、これって…」

「ふふ。驚いた?」


 サラはまるでイタズラが成功したことを喜ぶように微笑んだ。

 その反応を見て、クーリアはふくれっ面をした。


「こんな高いもの…」

「いいのいいの。それあげるから」


 サラがこう言ったら聞かないことを、クーリアは身をもって知っていた。これを断るとより高いものを押し付けられるのだ。なのでクーリアは、渋々その服を受け取ることにしたのだった。






 場所は変わり、クーリア達はサラの寝室のベットに寝転がっていた。

 寝室ではあるが、その広さはパン屋にあるクーリアの部屋の5倍はあるだろう。


「クー、今日はどうだった?」

「どうって?」

「対抗戦よ」


 あぁ…と納得した様子のクーリア。


()()()()()()()()


 その言葉の本当の意味を、一体どれだけの人が理解できただろうか。


「そっか…って、そっちじゃなくて!」

「うにゅ?」


 思わずクーリアが変な声を出す。


(それ以外に何かあったっけ?)


「クー的には対抗戦、楽しかったの?」

「あぁ……うん、まぁまぁかな」


 クーリアにとってのまぁまぁがどれだけのものなのかは、その本人にしか分からない。だからとても曖昧な答え方だ。


「曖昧ねぇ……まぁ少しは楽しめたんだ」

「うん」


 クーリアは楽しんだ…というより、()()()楽しかったのだ。


(あの防御魔法はまだ改良できるよね)


 サラと会話している間でも、クーリアは平常運転であった。


「サラは?」

「わたしもまぁまぁかな。でも、骨がある相手とは会えなかったよ」


 そもそもサラを満足させる、互角に戦える人は、ほぼいないだろう。それだけサラには実力があったのだ。


「だから明日は付き合って!」

「えぇー…」


 付き合って、とは、つまり模擬戦して!ということである。サラにとってクーリアは、ほぼ互角に戦える貴重な相手だったのだ。


 ………もっとも、サラはクーリアに手加減されていることに気づいているのだが。

 いつかは手加減なしで戦いたい、というのが、サラの目標でもあった。


「……まぁいいけど」

「やった!じゃあおやすみ!」


 そう言って本当にすぐに眠ってしまった。

 現在クーリアはサラと同じベットに寝ている。クーリアは隣ですぐに寝息を立て始めたサラに苦笑しつつ、自分もベットへと潜り込んだ。

















 



 ………皆が寝静まった夜。ベットから起き上がる1つの影があった。

 その影は口にハンカチを当て、咳き込む仕草をする。だが、そこに"音"は無い。

 そうして口から離れたハンカチには………赤いシミが出来ていた。

 その影はそれを見て何かを呟いたが、全くもって聞こえはしなかった。そしてそのままベットへともぐりこみ、何事もなかったかのように眠ってしまった。


 音はなかったが、口の動きから、おそらくこう言ったのだろう。


『まだ、時間はある』と……





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