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クーリアがサラによって案内された書庫は、かつてクーリアが住んでいた屋敷の書庫の広さを、遥かに上回っていた。
「ここよ……って、聞いてないわね」
サラが振り向くと、クーリアの目線はもう既に本にロックされていた。
「クー、ある程度のジャンルを教えてくれたら案内はできるけど?」
「……わたしが読むジャンルは分かるよね?」
「まぁね。聞いてみただけ」
クーリアが読む本。それは魔法書以外にない。
「でも、ちょっとは小説とかさぁ?」
「興味無いもん」
クーリアにとって、知識とならない本はあまり興味が無いのだ。
サラもそれを知っていて、敢えて言った。もしかしたら、気持ちが変わってくれるかも知れない、と…
「はぁ…じゃあこっちよ」
ため息をつきつつ、サラはクーリアを魔法書が入っている棚へと案内した。
「ここなんだけど…」
「………全部読んでる」
その発言を聞き、サラは少し顔を引き攣らせた。
目の前にある本は、ゆうに300は超えていた。それを全て読んでいるとクーリアは答えたからだ。
そしてさらに言えば、クーリアは一目見ただけで、読んだことがある本を一瞬で把握していた。それはつまり、読んだことがある全ての本を記憶しているということと同義であった。
「まぁ、そう言うと思ってたんだけどね」
「じゃあ、他にあるの?」
「ええ……これよ」
サラがどこからともなく取り出した本。それは……
「それ……無属性の……」
…そう。サラが手にしていた本。それは無属性の魔法書だった。
「これ…どうしたの?」
無属性の魔法書は数がない。それ故に高価で手に入りにくく、クーリアは読むどころか、見たことすらなかったのだ。
「手に入れるの大変だったのよ」
ちょっと苦労しました、というような感じでサラが答える。だが、ちょっとどころではないだろう。
「……いいの?」
それが理解できていたから、クーリアは冷静に尋ねた。
「いいよ。わたしは読んだから」
サラも無属性の適性を持っている。読むことは無駄ではない。
「…じゃあ読ませて貰うね」
クーリアはサラが魔法書を受け取り、書庫にある机でその魔法書を読み始めた。




