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クーリアがサラに引きずられること少し。
「…そろそろ歩いてくれない?疲れた」
「…分かった」
渋々と言った様子でクーリアは自分の足で歩き出した。
今クーリア達が歩いているのは、今のクーリアの父親が住んでいるところよりも、さらに高位の人が住む場所だ。
「…場違い感がすごい」
「そう?クーの容姿なら別に気にされないと思うけど」
確かにクーリアの容姿を見て平民と思う人はいないだろう。
……一応戸籍上は平民ではなく伯爵令嬢なのだが。
「ここよ…って、知ってるわよね」
「うん、知ってる」
クーリアはサラの家…本邸に来たことはない。だが、ある情報筋から場所は知っていた。
「すごいね…」
半ば呆れたような声を上げる。
クーリアの目の前にあった建物。それは今のクーリアの両親が住んでいる屋敷の2倍…もしくはそれ以上の大きさがありそうだった。
「おかえりなさいませ、サラ様。おや、お客様ですか?」
サラの屋敷の玄関に立って待ち構えていた執事が尋ねる。
「そう。わたしの友達…いや、親友ね。大丈夫でしょ?」
「はい。もちろんでございます。失礼ですが、名前を伺っても?」
「クーリアです。今回はいきなりで申し訳ありません」
ぺこりと頭を下げる。
クーリアのしっかりとした口調に、執事の男性は少し驚きを隠せないでいた。
「いえ、とんでもない。歓迎いたします」
微笑みながら執事がそう言う。
「ありがとうございます」
サラはそんなやり取りをみて、少しため息をついた。
「クー…そこまで畏まらなくてもいいのよ?」
「そういう訳にはいかないから」
クーリアはこういうことはしっかりしておきたい性格なのだ。
「…まぁいいけど。夕食はできてる?」
「はい。クーリア様の分も直ぐにご用意いたします」
「お願いね。それじゃあ、クーの分の食事ができるまで本でも読む?」
「読む!」
食い気味にクーリアが答える。
そのクーリアの反応をみて、サラはクスッと笑った。
「なに?」
「いや、クーらしいなぁって」
「らしいってなに?」
「気にしない気にしない。さぁこっちよ」
答えてくれなかったことを少し不服そうにしながらも、クーリアはサラの後をついて行った。




