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出来損ないと呼ばれた伯爵令嬢は出来損ないを望む  作者: かぐや
学園 高等部一年 対抗戦編
30/136

25

 予想通りというべきか。クーリアの祖父母はサラの家にいくことを許可した。

 というかものすごく喜んでいた。

 その様子を見て、クーリア、そしてサラでさえ引いていた。


「クーのおじいさん達、喜んでたね…」

「うん……わたし、そこまで心配させてたのかな?」

「……クーって今まで誰かと遊んだことある?」

「ない」


 クーリアが即答した。


(それならあの喜びようも納得だわ…)


 サラはすこしクーリアの祖父母に同情した。


「ところで…」

「なぁに?」

「……この時間からサラの家に行くってことは…泊まり、なの?」

「もちろん」


 クーリアの祖父母はそれも分かっていて、許可したのだ。もちろんクーリアも分かってはいたのだが、どうしても聞かずにはいられなかった。

 ……もしかしたら違うかもという期待を込めて。

 それは見事に玉砕した。




 クーリアの住む家から歩き始めてしばらく。もう既に日は落ち、辺りは暗くなり始めていた。

 そんな時、クーリアが唐突に口を開いた。


「サラの家って…()()()()?」


 その言葉の意味を理解できる人は、おそらくサラしかいないだろう。


「……知ってたの?」

「まぁ多少は?」


 あっけらかんとそう答えるクーリアだが、サラは内心とても驚いていた。

 なぜなら、話したことなど1度もないからだ。



「そう……行くのは本邸よ」

「帰っていい?いいよね」

「ダメに決まってるでしょ。こら!言ってるそばから逃げようとしない!」


 本邸と言う言葉を聞いた途端、クーリアは逃げ出した。

 だが、体格で優るサラに簡単に捕獲された。


「やだ!帰る!」

「大丈夫だって!」


 一体なにが大丈夫なのか…。

 まだ逃げようとするクーリアを、サラは引きずりながら家へと向かった。


「うぅ…」

「本、読みたいでしょ?」

「そうだけどぉー……」


 クーリアが嫌がったのにはある理由があった。

 無論その理由はサラも知っていた。だからこそ、大丈夫だと言ったのだ。

 その理由というのが……


「サラのお父さん、いない?」


 そう、サラの父親だ。

 決して暴力をふるってくるだとか、下に見てくるだとか、そういう理由ではない。

 ただ、その……クーリアは怒っているのだ。

 クーリアはサラの父親と会ったことがある。その時のある発言で……ちょっとクーリアが傷付いたのだ。

 体ではない。心が、だ。


「いないよ。でも、そろそろクーも許してあげたら?」


 もちろん謝ってはくれたのだが、その傷は相当深かったらしく、未だクーリアはサラの父親を許していない。というより、会うのを避けているので、そもそも許す機会がないのだ。


「……考えとく」


 短くそう言い、クーリアはそのままサラによって引きずられていった…。

 




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