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出来損ないと呼ばれた伯爵令嬢は出来損ないを望む  作者: かぐや
学園 高等部一年 対抗戦編
29/136

24

 対抗戦の2回戦を終え、クーリア達は帰路に就いていた。


「イルミーナはどうだった?」

「うーん、まだ消化不良」


 どうやら戦えたようだが、相手が実力不足で物足りなかったようだ。


「クーは?」

「うーん?」


 サラに尋ねられたが、クーリアは貰ったクッキーを頬張っており、答えられなかった。


「まったく…」


 サラはそう言うが、顔は笑っている。クーリアが嬉しそうにクッキーを食べてくれるのが嬉しいのだ。


「じゃあな」

「バイバーイ」


 ヴィクターとイルミーナがクーリア達と別れる。


「サラも行かなくていいの?」


 ごく自然にクーリアが尋ねる。


「あらクー。わたしがどこに向かってると思ってるの?」


 含みのある笑みを浮かべる。ヴィクター達が向かった場所は、貴族が暮らす地区だ。当然サラも貴族なのでそちらに家がある。向かうならそっちなのだが……


「まさか…家出!?」

「違うわ!」


 スパーンっとサラがクーリアの頭を叩く。見事なツッコミである。


「じゃあなんで?」


 若干涙目になりながら、クーリアが尋ねる。クーリアはサラの家がどこにあるのか知っている。なのでクーリアとは別れるはずなのだ。


「あなたねぇ…自分の姿鏡で見てる?」

「見てるよ?毎日」

「じゃあ分かるわよね?クーがとっても可愛いってこと」


 ここはまだ貴族地区に近いので治安がいい。だが、クーリアが住む場所は治安が少し悪い。

 いつもの時間帯ならば安心なのだが、今日は対抗戦だったため、いつもより遅くなってしまっていた。

 クーリアには自覚がないが、その容姿は人目を引く。珍しいというのもそうだが、可愛いという意味合いでだ。

 なのでサラは襲われないか心配していたのだ。

 ……おそらくクーリアなら返り討ちにするだろうが。


「そうかなぁ?」

「そうよ。まぁそれは建前で……わたしの家にこない?」


 もとよりそれが1番の目的だろう。


「サラの家?」

「そう」

「今から?」

「そうよ。明日は休みだし」


 対抗戦の疲れを取るという名目ではあるが、対戦会場を整えるのが1番の理由だ。


「だから今からクーの家行って、許可貰ってから行きましょ」

「……わたしに拒否権は?」

「ない」


 断言された。まぁ断る理由もないのだが…。

 そもそも祖父母達がクーリアに友達と遊んで欲しいと思っているので、この提案は願ったり叶ったりだろう。


「はぁ…」

「まぁまぁ。本読みたいでしょ?」

「読みたいけど…あるの?」


 それはクーリアが未だ読んだことがない本があるか、ということだ。


「もちろん」


 自信満々に頷いた。そこまで自信満々に言うのだから、あるのだろう。


「……分かった」


 渋々であるが、読んだことがない本があると言われれば、クーリアからしたら行くしかない。


 サラとクーリアは、共に祖父母のパン屋へと足を進めるのだった。




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