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対抗戦の2回戦を終え、クーリア達は帰路に就いていた。
「イルミーナはどうだった?」
「うーん、まだ消化不良」
どうやら戦えたようだが、相手が実力不足で物足りなかったようだ。
「クーは?」
「うーん?」
サラに尋ねられたが、クーリアは貰ったクッキーを頬張っており、答えられなかった。
「まったく…」
サラはそう言うが、顔は笑っている。クーリアが嬉しそうにクッキーを食べてくれるのが嬉しいのだ。
「じゃあな」
「バイバーイ」
ヴィクターとイルミーナがクーリア達と別れる。
「サラも行かなくていいの?」
ごく自然にクーリアが尋ねる。
「あらクー。わたしがどこに向かってると思ってるの?」
含みのある笑みを浮かべる。ヴィクター達が向かった場所は、貴族が暮らす地区だ。当然サラも貴族なのでそちらに家がある。向かうならそっちなのだが……
「まさか…家出!?」
「違うわ!」
スパーンっとサラがクーリアの頭を叩く。見事なツッコミである。
「じゃあなんで?」
若干涙目になりながら、クーリアが尋ねる。クーリアはサラの家がどこにあるのか知っている。なのでクーリアとは別れるはずなのだ。
「あなたねぇ…自分の姿鏡で見てる?」
「見てるよ?毎日」
「じゃあ分かるわよね?クーがとっても可愛いってこと」
ここはまだ貴族地区に近いので治安がいい。だが、クーリアが住む場所は治安が少し悪い。
いつもの時間帯ならば安心なのだが、今日は対抗戦だったため、いつもより遅くなってしまっていた。
クーリアには自覚がないが、その容姿は人目を引く。珍しいというのもそうだが、可愛いという意味合いでだ。
なのでサラは襲われないか心配していたのだ。
……おそらくクーリアなら返り討ちにするだろうが。
「そうかなぁ?」
「そうよ。まぁそれは建前で……わたしの家にこない?」
もとよりそれが1番の目的だろう。
「サラの家?」
「そう」
「今から?」
「そうよ。明日は休みだし」
対抗戦の疲れを取るという名目ではあるが、対戦会場を整えるのが1番の理由だ。
「だから今からクーの家行って、許可貰ってから行きましょ」
「……わたしに拒否権は?」
「ない」
断言された。まぁ断る理由もないのだが…。
そもそも祖父母達がクーリアに友達と遊んで欲しいと思っているので、この提案は願ったり叶ったりだろう。
「はぁ…」
「まぁまぁ。本読みたいでしょ?」
「読みたいけど…あるの?」
それはクーリアが未だ読んだことがない本があるか、ということだ。
「もちろん」
自信満々に頷いた。そこまで自信満々に言うのだから、あるのだろう。
「……分かった」
渋々であるが、読んだことがない本があると言われれば、クーリアからしたら行くしかない。
サラとクーリアは、共に祖父母のパン屋へと足を進めるのだった。




