21
「クー、持ってきたよ」
アランに見つめられ続けていると、やっとウィリアムが食事を持ってきてくれた。
「ありがとう、お兄ちゃん」
「いいよ。これくらい」
持ってきた食事は、さすがと言うべきか。とても豪華なものだった。
「食べれる?」
「……多分」
クーリアはかなり少食だ。だが、持ってこられた食事はかなり多い。普段食べる量の2倍はあるだろう。
「残ったら食べてあげるよ」
「僕も」
「うん、お願い」
アランとウィリアムから言質をとり、クーリアは食べ始める。だが、予想した通り食べきることは出来なかった。
「もう、むり」
限界になり、兄ふたりに押し付けた。2人はもとからこのことを予想していたようで、あまり食べていなかった。そのため、クーリアが残した食事を全て食べることができた。
「ご馳走様でした」
クーリアはお腹をさする。これから第2回戦だというのに、呑気なものだ。
「それじゃあ俺はこれを片付けてくる。クーは…友達といくかい?」
「あ、うん」
ウィリアムの目線を追いかけると、サラ達がこちらを見ていた。どうやら待ってくれていたらしい。
「お兄ちゃん達頑張ってね」
「ああ、もちろんだ」
「クーも頑張ってね」
兄ふたりに手を振って別れる。
「クー、もういいの?」
「うん。行こっか」
サラ達と共に食堂を後にする。試合まであと30分ほどだ。
「じゃあ作戦会議でもしましょうか」
「さんせー」
イルミーナが乗り気だ。
「だってボク戦えなかったんだもん」
どうやら1回戦でイルミーナが向かったのは、大将がいた場所だったらしい。すれ違ったようだ。よってイルミーナは消化不良という訳だ。
「うーん、どうする?」
サラが意見を求める。だが、クーリアはなにも考えていない。というより、考えることをしない。もとより負けるつもりだったのだ。わざわざ意見するつもりも無い。
「それじゃあイルミーナが真ん中でいいんじゃないか?」
真ん中のフラッグには守る人が集まりやすい。左右のフラッグに駆けつけやすいからだ。
「それでいいわね。クーは…また守りをよろしく」
「…うん」
任せてとは言わない。やる気がないのだから。
………だが、初等部からの付き合いだ。クーリアの返事が曖昧だったことに気づかないわけがない。
「クー、もし勝てたらこれあげる」
サラがポケットから取り出したのはひとつの小さな包。
「なにそれ?」
クーリアが首を傾げる。
「これはね、王都で大人気のクッキーよ」
サラがそう言うと、クーリアの目が輝いた。
クーリアは甘党だ。買い物で優先するのは本だが、最近はだいたいの本を読んでしまったので、買うものがなかった。それにより、お菓子の魅力に取り憑かれたのだ。それをサラが知らないわけがない。
「頑張ってね」
「まかせて!」
クーリア、ちょろすぎる。だが、サラもクーリアの扱いをよく分かっている。
そんな光景を見て、男ふたりはお互い顔を見合わせて苦笑いをするのだった。




