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出来損ないと呼ばれた伯爵令嬢は出来損ないを望む  作者: かぐや
学園 高等部一年 対抗戦編
26/136

21

「クー、持ってきたよ」


アランに見つめられ続けていると、やっとウィリアムが食事を持ってきてくれた。


「ありがとう、お兄ちゃん」

「いいよ。これくらい」


持ってきた食事は、さすがと言うべきか。とても豪華なものだった。


「食べれる?」

「……多分」


クーリアはかなり少食だ。だが、持ってこられた食事はかなり多い。普段食べる量の2倍はあるだろう。


「残ったら食べてあげるよ」

「僕も」

「うん、お願い」


アランとウィリアムから言質をとり、クーリアは食べ始める。だが、予想した通り食べきることは出来なかった。


「もう、むり」


限界になり、兄ふたりに押し付けた。2人はもとからこのことを予想していたようで、あまり食べていなかった。そのため、クーリアが残した食事を全て食べることができた。


「ご馳走様でした」


クーリアはお腹をさする。これから第2回戦だというのに、呑気なものだ。


「それじゃあ俺はこれを片付けてくる。クーは…友達といくかい?」

「あ、うん」


ウィリアムの目線を追いかけると、サラ達がこちらを見ていた。どうやら待ってくれていたらしい。


「お兄ちゃん達頑張ってね」

「ああ、もちろんだ」

「クーも頑張ってね」


兄ふたりに手を振って別れる。


「クー、もういいの?」

「うん。行こっか」


サラ達と共に食堂を後にする。試合まであと30分ほどだ。


「じゃあ作戦会議でもしましょうか」

「さんせー」


イルミーナが乗り気だ。


「だってボク戦えなかったんだもん」


どうやら1回戦でイルミーナが向かったのは、大将がいた場所だったらしい。すれ違ったようだ。よってイルミーナは消化不良という訳だ。


「うーん、どうする?」


サラが意見を求める。だが、クーリアはなにも考えていない。というより、考えることをしない。もとより負けるつもりだったのだ。わざわざ意見するつもりも無い。


「それじゃあイルミーナが真ん中でいいんじゃないか?」


真ん中のフラッグには守る人が集まりやすい。左右のフラッグに駆けつけやすいからだ。


「それでいいわね。クーは…また守りをよろしく」

「…うん」


任せてとは言わない。やる気がないのだから。



………だが、初等部からの付き合いだ。クーリアの返事が曖昧だったことに気づかないわけがない。


「クー、もし勝てたらこれあげる」


サラがポケットから取り出したのはひとつの小さな包。


「なにそれ?」


クーリアが首を傾げる。


「これはね、王都で大人気のクッキーよ」


サラがそう言うと、クーリアの目が輝いた。

クーリアは甘党だ。買い物で優先するのは本だが、最近はだいたいの本を読んでしまったので、買うものがなかった。それにより、お菓子の魅力に取り憑かれたのだ。それをサラが知らないわけがない。


「頑張ってね」

「まかせて!」


クーリア、ちょろすぎる。だが、サラもクーリアの扱いをよく分かっている。

そんな光景を見て、男ふたりはお互い顔を見合わせて苦笑いをするのだった。




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