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出来損ないと呼ばれた伯爵令嬢は出来損ないを望む  作者: かぐや
学園 高等部一年 対抗戦編
25/136

20

  クーリアが兄たちの方へと向かうと、周りを囲んでいた令嬢がまるで壁のように立ちはだかった。


「あなた、誰ですの?」

「えっと…妹です」


  正直にクーリアが答えたのに、令嬢は目を見開き、まるでクーリアの言葉が信じられないといったような反応をした。


「嘘をつくのも大概になさい!」

「えぇー…」


  クーリアは呆れ顔だ。しかし、そうなることも予想していなかった訳では無い。妹と言われても、まるで似ていないのだから。


「ちょっと、その発言はどうかと思うよ?クーは正真正銘僕達の妹なんだから」

「「「えぇ?!」」」


(だから来たくなかったのに…はぁ)


  クーリアが内心うんざりしているとは夢にも思わないで、兄2人はクーリアの手を取った。


「行こっか」

「……うん」


  とても不服そうにクーリアが答えた。だが、それが令嬢達の気に触ったらしい。


「あなた生意気ですわ!せっかくアラン様が手を取ってくださったのに!」


  今にも掴みかかろうとする令嬢を、もう1人の兄が宥める。


「どこが生意気なのかな?実の妹だよ?どんな反応をしようがいいだろう?」


  宥めるようでいて、有無を言わさない口調でそう問いかける。


「あ…いえ…その…」


  令嬢は兄の怒りに触れたことが分かったらしい。明らかに動揺し始めた。


「それじゃあ御機嫌よう」


  クーリアは兄2人から手を引かれ、その場を後にする。その後ろを、サラたちが邪魔しない距離で追いかけた。






 




  場所は変わって食堂に。

  対抗戦は学園で行われているため、基本的食事をとるのは食堂になる。


「どうしたの?そんな不服そうな顔をして」


  傍から見ればクーリアはいつもの無表情だが、兄たちには分かったらしい。


「…分かってますよね?」

「分からないなぁ。ちゃんと教えてくれないと」


  明らかにわざとらしくそう言ったのは、次男のアラン。以前職員室前にいたのは、長男のウィリアムだ。

  アランもウィリアムも同じ朱色の髪で、顔立ちはウィリアムのほうが美形。アランも美形だが、武人よりの顔立ちで、ゴツゴツしている。


「…もういいです」


  プイとそっぽを向くクーリア。そのクーリアの頬をウィリアムが突く。


「クーが可愛い…」


  ウィリアム、シスコンである。


「兄さん、クーが可愛いのは当たり前だよ」


  ……アランもシスコンであった。


「それより、なにか食べないかい?もうペコペコで…」


  その言葉を裏付けるように、アランの腹の虫が鳴いた。


「そうだな。クーは何がいい?払ってあげるよ」

「……じゃあAセット」


  食堂は日替わりのセットメニューとなっており、その中で1番高いのがAセットだ。


「1番高いの…」

「払ってくれるんですよね?」


  あざとく首を傾げるクーリア。その姿を見て、ウィリアムは苦笑しながらも、食事を取りに行った。


「アランは残って。クーが何されるか分からないから」


  去り際にそう言い残した。実際クーリア達には食堂にいるほぼ全ての目線が集まっていた。


「だから嫌だったのに…」


  ちなみにサラたちは少し離れた場所に座っていた。せっかくの兄妹揃っての食事を邪魔したく無かったらしい。


「クー、そろそろ本性を見せてもいいんじゃないかな?」


  いきなりアランがクーリアに爆弾発言をかました。それはどこか確信めいた口調だった。


「……なんの事ですか」

「兄さんはいい意味で天然だから気づいてないけど、僕は分かるよ。クーが実は猫を被ってるって」


  アランの言っていることは、実は正しかったりする。クーリアは基本本性を隠している。というより…バカ、いや、天然を演じている。


「…私にはなんの事だか」

「そう?まぁ話す気になったらでいいよ」


  そう言って思わせぶりな笑みを浮かべた。


(やっぱりアランお兄ちゃんは苦手…)


  クーリアは早くウィリアムが帰ってきてくれないかと、食事の受け渡し口を見つめるのだった。


 


 

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