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出来損ないと呼ばれた伯爵令嬢は出来損ないを望む  作者: かぐや
学園 高等部一年 対抗戦編
24/136

19

「キャー!緋色の騎士様がこっちにきたわよー!!」


  どこからともなく甲高い女性の声が聞こえた。ふとクーリア達が視線をスクリーンに移すと、どうやらこの観客席に向かってきているようだ。


「ねぇ…もしかして、もしかしなくても…ここに来る理由って…」

「うん…多分私」


  サラの確認をクーリアが肯定する。


「…逃げる?」


  ここで注目を集めてしまうと、何かと面倒なのだ。ここには爵位の高い令嬢も多い。彼女らから睨まれる結果となるのは目に見えていたからだ。


「…サラはむしろ、絡まれたほうがいいんじゃない?」

「……クー、ちょっとあなたも()()しようか?」


  サラがニッコリと微笑み、拳を握りしめる。


「イエ、ケッコウデス…」


  サラの教育…先程イルミーナが受けていたものだ。さすがにサラも本気でクーリアにそれをするつもりは無い……はずだ。


「ねぇ、どうして絡まれたほうがいいの?」

「あー、それはねぇー…」

「クー、ダメ!」


  サラが大声でクーリアの声をかき消した。ついでにクーリアの口も手で塞いだ。


「むごむご…」

「(クー、ほんとにやめて!)」


  小声でクーリアに囁く。それを聞いて、クーリアはコクコクと頷いた。


「ぷはぁ…ふふっ。じゃあ後で食事奢って?」

「うぅ…分かった」


  所謂口止め料である。クーリアもそこまでお金には困っていないのだが、払わないに越したことはない。


「え?え?教えてくれないの?」

「ごめんね、言えないや」

「うー!知りたい!」


  イルミーナが駄々をこねるが、クーリアはサラに言うなと言われたので、教えることができない。

  ……元々クーリアはふざけていただけだったので、教える気などこれっぽっちも無かったのだが。つまり、サラはクーリアにまんまと騙され、無駄な口止め料をとられてしまったということだった。

 



「「「キャー!!」」」


  突然甲高い声が観客席に響く。

  声の先にいたのは……


「あ…もう来ちゃった」


  緋色の騎士。クーリアの兄だった。

  クーリアの兄は観客席に入った途端に令嬢に囲まれ、身動きが取れなくなってしまったようだ。


「クー、どうする?」

「うーん…」


  クーリアがこのまま人知れずその場を後にするか悩んでいるうちに、だんだんと人だかりが近づいてくる。どうやら囲まれたまま進んできているようだ。


「あ、クー!」


  そしてとうとう、見つかってしまった。ただでさえクーリアは目立つ容姿をしているのに、大声で名前を呼び手を振るもんだから、一斉にクーリアへと視線が集まる。まったく迷惑なものである。


「お、お兄ちゃん…」


  おいでおいでと手招きされ、クーリアは仕方なく兄たちの方へと向かって行った。




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