18
クーリア達は本部まで赴き、無事2回戦へとコマを進めた。
「自滅って、そんな勢いで突っ込んだの?」
「そうそう。誰もいなかったからかな?」
そう。敵の主将が突っ込んだのは、クーリアが立っていた真ん中ではなく、端のフラッグだったのだ。
普通誰もいなかったとしても、少しは警戒するものだが…どうやらクーリア達にフラッグを取られ、焦っていたらしい。走っていってクーリアの防御魔法にぶつかり、その衝撃でネックレスが割れてしまったのだった。防御魔法は透明なので、見えなかったらしい。
「それは…まぁバカよね」
サラは意外と毒舌だったりする。まぁそれ以外言う言葉が見つからないのだが…
「2回戦は午後からだとよ」
「そうなの。じゃあ別の試合見ましょうか」
対抗戦は高等部1年からなので、別の学年も行っている。
「そうね…3年の対抗戦でも見ましょうか」
「そうだな。なにかいい作戦とか見つかるかもな」
「クーもそれでいい?」
「うん」
こうしてクーリア達は3年の対抗戦が観戦できる場所へと移動した。
クーリアが到着した時、観戦席はかなりの熱狂に包まれていた。
「何があったのかしら?」
不思議に思いながらクーリア達は空いてる席を探し、なんとか4人座れる席を見つけた。
「あそこで見ましょう」
「さんせーい」
イルミーナが我先に席に着く。
「全く…」
それに続き、クーリア達が席に着いた。
「多分熱狂の原因はあれじゃないかな」
ヴィクターが試合を映したスクリーンを指さす。そこには朱色の髪を持つ、2人の兄弟が映っていた。何故兄弟と分かったのか。それは2人の顔がとても似ていたからである。
「あー、【緋色の騎士】ね」
緋色の騎士とは、その2人の兄弟の通り名だった。成績優秀。文武両道で武術、魔法にも秀でている。まさにエリート。
「お兄ちゃん達そんな通り名あったんだ…」
「「「え?!」」」
思わずクーリアがつぶやいた言葉を聞き、サラ達は驚きをあらわにした。
「うん?どうしたの?」
その理由が分からなくて、クーリアは首を傾げた。
「い、いや…クーのお兄ちゃんって…」
「あぁ。うん。あの人達だよ。言ってなかった?」
「兄弟の話は聞いてたけど…まさか【緋色の騎士】だとは知らなかった」
そう。クーリアは話していなかった。まぁその通り名を知らなかったので、無理もない。
「でも、似てないよね?異母兄妹?」
イルミーナが無邪気にそう尋ねる。しかし、そう聞かれたクーリアは俯き、口を開かなくなってしまった。
「あ、え?だ、だめな話題だった?」
いきなり黙りしてしまったクーリアに、イルミーナは大慌てだ。
「…ううん。似てないのは事実だから。でも、異母兄妹ではないの。ちゃんと同じ親からだよ」
俯きながら、クーリアは答えた。
「ちょっと!クーになんて表情させるのよ!」
「えぇ!ボクのせい?!」
ぎゃいのぎゃいの口論を初めてしまったサラ達を後目に、ヴィクターがクーリアに寄り添った。
「大丈夫か?」
「…うん。分かってはいたけど、いざ言われるとちょっと気にするもんだね…」
ヴィクターは黙ってクーリアの頭を撫でた。
「大丈夫だ。イルミーナだって嫌味じゃないんだから、気にすることない」
「そう、だね………で、いつまで撫でてるのよ」
まるで小さな子供と接するようにするヴィクターに、クーリアはふくれっ面をした。
「くくっ…その顔がなんとも…」
「もう!身長低いからって子供扱いしないでよ!」
いつの間にか、クーリアの気持ちは持ち直していた。
「あ、終わった」
クーリアの兄2人の試合は、もちろん圧勝で終わっていた。全滅&フラッグ全回収。これ以上の圧勝はないだろう。
「クー、イルミーナは絞めておくから、もう気にしないでいいわよ」
「絞めるって…大丈夫だよ。もう気にしてないから」
その言葉を聞いて、サラの後ろで死んだ目をしていたイルミーナの顔が華やいだ。
「ありがとう!クーリア!」
「もう!ありがとうじゃないでしょうが!」
「グヘッ!…うぅ…ごめんよ」
「う、うん」
目の前で殴られるイルミーナを見て、サラを怒らせないようにしようとクーリアは心に決めたのだった…




