表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
出来損ないと呼ばれた伯爵令嬢は出来損ないを望む  作者: かぐや
学園 高等部一年 対抗戦編
21/136

16※

  私があの子に会ったのは初等部の時だった。

  消極的で物静かで、いつも教室の端に座って本を読んでいた。周りはそれが当たり前だという風に接していた。というより、近寄ろうとしなかった。だからいつも1人で、その子もそれを気にしていないようだった。


  …だけど、私には、あの子…クーリアの瞳が時折寂しそうな感情を宿していると思った。確信はなくて、でもどうしても話しかけなきゃって思った。

  思い切って話しかけたら、クーリアは誰とも変わらない、普通の女の子だった。

  ちょっと抜けてて、控えめに笑う。でも、私はその笑顔に魅せられた。

  みんなはクーリアが無表情だと言っていたけど、そんなのは嘘だった。ちょっと分かりにくいかもしれないけれど、同じように笑い、同じように泣く。2つの微妙に色が違う瞳に見つめられると、つい守りたくなる。不思議な子だった。


  クーリアはいつも授業中眠っていた。何度怒られても懲りなくて、時には私も叱ったりした。

  ……でも、それでも眠っていた。これには私もイラついた。


「なんで真面目にやらないのよ!!」


  ついそう怒鳴ってしまった。クーリアはしばらく唖然としていたけど、すぐにいつもの表情にもどった。


「えっとね……だってそう見えるようにしてるんだもん」

「え?」


  私はクーリアが何を言ったのか分からなかった。


「私が白ってことは知ってるよね?」

「それは…うん」

「ふふっ。正直に言ってくれてありがとう」


  まるで自身を嘲笑するような笑みを浮かべた。


「だからね、私は目立っちゃいけないんだよ」

「…どういうこと? 」

「誰だって白になんか負けたくないって思うでしょ?だから、私が勝っちゃうと何かと面倒なの」


  そう言って窓の外を見つめる。表情は分からなかったけど、それがクーリアの本心でないということは分かった。ちゃんと真面目にやりたいけど、出来ない。周りがそれを許さない。


「そんなことって…」

「だから…こんな風にしか出来ない私だから、別に離れてもいいんだよ?」


  その言葉は私の心にとても深く突き刺さった。今までクーリアが1人でいた理由が分かったから。

  本当は1人でいたくない。そんな気持ちがひしひしと伝わった。


「……いやだ」

「え?」

「そんなの、悲しすぎる!私は何がなんでもクーリアのそばにいる!だから、だから…!」


  そんな悲しそうな顔をしないで欲しい。


  私はそれからよりずっと一緒にいるようにした。陰口を言うやつは徹底的に叩き潰した。


「そこまでしなくても…」


  クーリアはいつも申し訳無さそうだった。

  直接はなにもしてこないんだから、別に気にしなくていいと。

  私もそうは思った。だけど、クーリアと共にいるにつれて、その陰口がどれだけ精神に響くのかを身に染みて理解した。

  どんな力よりも、言葉のほうがより鋭利な武器となる。


「よくクーリアは耐えたね…」

「まぁ慣れかな。そもそも父親に比べたら全然だし」

「父親…?家族からもやられてたの?」


  私はとても驚いた。だっていつも母親や兄妹の話をするクーリアは、とても楽しそうだったから。


「父親からだけ。今は会ってないから、されてないよ」

「そうなの?」

「うん」


  その会話の後、正直に言うと、私はその父親のことを調べあげた。無論クーリアには内緒で。


「こんな奴が…」


  そしたら出るわ出るわ不正の証拠。だけど、これは()()()の仕事。あれからその男がどうなったのかは知らない。多分…もういないかも。

  そんなことをクーリアに話すつもりはないけどね。


「ねぇ、サラ?」

「なぁに?」

「……なにした?」


  でもやっぱりクーリアにはバレてしまった。おかしいなぁ?完璧に私が関わったっていうのは隠蔽したんだけど…


「貴方が何者なのか、それは言わないけど、あまり他人のことに首を突っ込まないほうがいいよ?」

「そう言うってことはもう分かってるんだ?」


  驚いた。まさかそんなに早く気付かれてるなんて…


「…はぁ。まぁ私の1番の秘密は気付いてないか…」

「え?なにそれ?」

「教えなーい」


  それから何度も追求したけど、クーリアは教えてくれなかった。まだ信頼が足りないから教えてくれないのかな?だったら、いつか話してくれるようになったらいいな……




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ