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対抗戦当日。クーリアは至って落ち着いていた。
(みんなには悪いけど…そうそうに負けさせて貰わなきゃ。じゃなかったらまた面倒なことに…)
クーリアは元から、この対抗戦に勝つつもりは無かった。それにはれっきとした理由があったが、その事をクーリアはチームメイトに話すつもりは無かった。
「クー、大丈夫?」
「大丈夫だよ」
落ち着いているクーリアとは打って変わって、サラはソワソワして落ち着かない。緊張からくるものだろう。ヴィクターもイルミーナも同様だ。
……イルミーナはちょっと面白がっている節があるが。
「ではただいまより、第132回対抗戦を開催します」
学校長の言葉により、開催が宣言される。学校長の名はドリトール・マクスウェル。白髪のおじいさんだが、魔法では国で一二を争うほどの実力者だ。
ドリトールの宣言により、辺りは歓喜に包まれる。1年に1度の大イベントだからだ。
「私たちは?」
「初戦だね」
どうやらクーリア達のチームは、初戦のようだ。
「では第1回戦のチームはこちらへ」
先生の指示により、それぞれのチームが魔法陣の上に乗る。
これは転移の魔法陣。彼らが戦うフィールドは、森林、草原、岩場、砂漠、水辺など様々あり、そのどれかにランダムで転移される。
「では第1回戦、開始!」
ドリトールの言葉と同時に、魔法陣が光を放ちながら起動する。
(あ、この魔法陣を研究したら、何か分かるかも)
こんな時でさえ、クーリアは研究の事しか考えていなかった。
だが、クーリアの考えは正しいと言えた。なぜなら、この長距離転移魔法陣は、今や失われたと言われている魔法で出来ているからだ。そのため、その謎を解き明かすのにはうってつけの研究材料と言える。
しかしながら、その貴重性故に、中々お目にかかることは難しい。クーリアも今回が初めてだった。
(あぁ、もう転移しちゃう…これはもう1回乗りたい。よし!そのために勝とう!)
少々ズレてはいるが、そのおかげで、クーリアは今からの試合に気合いを入れてくれたようだった。




