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対抗戦がある日までは、ほとんどの授業が自主練ということになった。
「という訳で、作戦会議よ!」
クーリア達のチームは、基本的サラが引っ張っていた。
「作戦って言ってもなぁ?」
「ボク達が突っ込めばいいんでしょ?」
ヴィクターとイルミーナがそう言う。
「まぁそうなんだけど…ってクー、戻ってきなさい」
いつの間にかクーリアは夢の中へと堕ちていた。
「うぅん…あと5日」
「いやせめて5分にして!?」
クーリアはとうとうサラに叩き起された。
「ふわぁ…」
「クー…ここで欠伸はしないほうがいいわよ」
「ふぇ?」
サラが目線で指し示した方を、クーリアが見ると……何人かの男子が後ろを向いて倒れていた。しかもその地面には、鮮やかな赤い花が咲いていた。
「え?」
「クーは十分可愛いんだから、そんな姿を見せてたらいつか襲われるわよ」
「そんな訳ないじゃん」
その言葉は、クーリアの本心だった。だが、クーリアの容姿は世間的にも可愛いという部類に入るものだった。
白に近い肌に青みがかった銀髪。それらの効果により、クーリアは儚げで透明感のある、いまにも消えそうな印象を与え、男女問わず、十分に庇護欲をかき立てられるものだったのだ。
……現に、クーリアのファンクラブすらあるのだから。クーリア自身は全くもって知らないが。
「とにかく、クーも会議に参加して?」
「えー、でも私ができることなんて限られてるよ?」
クーリアが使える魔法は無属性魔法。それはあまり攻撃を得意としない魔法なのだ。
一般的に知られている無属性魔法は、防御魔法、治癒魔法、干渉魔法、それと使える人は限られるが、転移魔法などだ。つまり無属性魔法というのは、いわゆる支援魔法の部類に入る。
「だけど、クーは扱いが上手いでしょ?」
実はクーリアは魔法を研究しているが故に試しで魔法を使うことが多く、その結果、魔法制御、魔力制御が人一倍高くなっていたのだ。
制御が上手いということは、魔法が発動するまでの時間が短くなるということでもある。
魔法を使うには呪文とイメージ、魔力が必要になり、魔力制御が上手ければ、その分イメージを魔力に定着させやすくなるのだ。そのため、魔法の発動が早くなる。
さらに魔法制御が上手ければ、発動した魔法の効果の真価をより発揮することができるようになる。
「だからクーは1人だけで守れるんじゃないかって」
守るとは、フラッグのことだ。基本的に3本のフラッグは、それぞれ比較的近い場所に設置される。つまり、守ろうと思えば、1人でも守れるのだ。
「できるよ?多分」
「多分なんだ…まぁ心配はしてないけど」
「無理はするなよ?」
「大丈夫。本気は出さない」
「いやそこは出して欲しい…」
クーリアにとって、無理=本気という認識だったのだ。
「そう?でも、どちらしろ出さないけど」
堂々と本気でやらないというクーリアを説得することは、サラ達でさえ叶わなかった…




