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「これで帰れる?」

「だったら良かったんだけどねぇ…」


団長が居ないので書類仕事以外の仕事もわたしに回ってくる。


「何があるの?」

「今日1日、魔法訓練場に結界を展開しとくことだね」


 一応展開しておく魔導具があるのだが、現在故障中の為人力で展開しなければならない状況になっているのだ。


「……」

「どうしたの?」


 お姉ちゃんが手を顎に当て、悩む仕草をする。


「多分、直せるかも」

「え、魔導具を?」

「うん」

「それは出来るなら有難いけど…」


 確かにお姉ちゃんは魔導具にもちょっと精通していたとは聞いているので、案外見てもらったらどうにかなるかも知れない。


「じゃあ案内するね」


 ふよふよと浮かぶお姉ちゃんと共に部屋を出る。途中何人かとすれ違ったが、お姉ちゃんに気付く様子は無かった。

 ……だからといってすれ違う人の頭に水滴垂らすの止めてお姉ちゃん。気付かれたらどうするの。



「ここだよ」


 魔法訓練場の地下、そこに魔導具はある。

 地下の薄暗い小部屋の中央にあるのは、台座に乗った小さな盃。


「これ?」

「うん。ここに魔石を置いて発動させるの。魔導具っていうけど、実際は自立稼動の魔法陣と言ったほうがいいかもね」


 この盃が抽出した魔力が、部屋全体に描かれた魔法陣に伝わり、結界を展開する仕組みだ。


「ふーん。……」


 そう言ったきりお姉ちゃんは黙ってしまった。ジーッと盃を見つめるその瞳は、綺麗な蒼を浮かべている。


(ほんと綺麗な瞳してるよね)


 元々お姉ちゃんのオッドアイは大好きだったけれど、今こうして精霊の証(・・・・)である深い蒼の瞳を持っているお姉ちゃんも大好きだ。


「あー…分かったかも」


 部屋の魔法陣を見渡しふと呟く。


「これ、結構古い?」

「うん。結構前からあるみたいだよ」

「だったら仕方ないかもねぇ……これ、今の(・・)魔石じゃ動かないよ」

「え…?」


 今のじゃ、動かない?


「昔の方が魔石って品質が良かったんだよ。だから大雑把な仕組みでも動いてた」

「でも今はそんなに良くないから、大雑把な仕組みじゃ魔力が足りなくなるってこと?」

「そういうこと。よく分かったね、流石リーフ」


 よしよしとお姉ちゃんがわたしの頭を撫でる。年齢を考えるとちょっと恥ずかしいけど、またこうして撫でて貰えて、嬉しいという気持ちが勝る。


「多分、今まではかなり大きめの魔石で無理やり動かしてたんだね」

「確かに大きかった、かもぉ…」


 …駄目だ、骨抜きにされるぅ…


「ふふっ。【氷結の魔女】が形無しだね」

「うぅ…」


 【氷結の魔女】はわたしの2つ名のようなものだ。氷魔法を主に扱うことと、お姉ちゃんが帰ってくるまでは感情が死んでいたから、こんな2つ名が付いた。


「ん、満足。じゃあちょっと弄るね」

「……」


 お姉ちゃんの撫でテクによってすっかり腰が砕けてしまったわたしは、目の前で披露されるお姉ちゃんのトンデモ魔法を、ただ座って眺めることしかできないのだった。

 

 



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