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「………」


 黙々と書類を処理していく。すると、カチャリと傍にカップが置かれるのが分かった。それと同時に香る、豊かな紅茶の匂い。横目で見れば仄かな湯気が立ち上っている。


「ありがとう」


 目線を書類から離すことなく、入れてくれたであろう部下に感謝を伝える。


「どういたしまして」

「……へ?」


 しかし返ってきたのは物凄く聞き覚えのある声で……思わず変な声が出る。顔をあげれば、お姉ちゃんがこちらを嬉しそうな表情を浮かべて見つめていた。


「お、おおお姉ちゃん!?」

「そこまで驚かなくても…」


 お姉ちゃんが苦笑を浮かべる。でもこれで驚かない人居ないと思うの。


「久しぶり、リーフ」

「…うん、久しぶり」


 半年ぶりに、お姉ちゃんと会話する。やっぱりお姉ちゃんと話すと、心が穏やかになる気がする。


「あれ、サラさんは?」

「サラはもう帰ったよ」

「早…」

「まぁわたしもそう思う」


 恐らくだが、サラさんなりに気を利かせてくれたのだろう。


「それよりも、その、リーフ…」

「ん?…あぁ、そうだね」


 お姉ちゃんが求めているのは、わたしの魔力だ。サラさんが居なくなってしまったから、だいぶ不安定になってしまっているらしい。

 お姉ちゃんと手を繋ぎ、魔力を絆ぐ。


「ふぅ…ありがと、リーフ」

「これくらい大丈夫だよ」


 お姉ちゃんにはそう言うが、実際はかなりの魔力を消費している。わたしやサラさんは魔力が多い上に回復も早いので丸二日でも大丈夫だが、多分お兄ちゃんは半日持たない。


「まだ仕事あるの?」

「うん。ごめんね、せっかく来てくれたのに」

「…手伝おうか?」


 その言葉を聞き、少し悩む。お姉ちゃんに手伝って貰えれば、確かにすぐ終わる。でもこれはわたしに任された仕事だし…


「ていうか、正直に言うと待つだけなの暇だからやらせて」

「正直すぎる…まぁ、確かにね。じゃあこっちお願いしていい?」

「うん」


 山のひとつをお姉ちゃんに任せる。


「簡単に言うと、確認するのは報告書の数値が正確であるか。整合性があるか。継続価値はあるかだよ」

「それだけ?」

「それだけでいいよ。この確認表に訂正とか書いてね」


 書類などは全て番号で管理されているので、訂正などは直接書くのではなく確認表に書いていくのだ。


「分かった」


 お姉ちゃんが一山を抱えて、部屋にある別の机へと運んでいく。その様子を見届け、紅茶を1口含んでからわたしも仕事を再開した。



















「終わったよ」

「…え、もう?」


 時計を見れば、まだ1時間も経っていない。


「じゃあこっちも…あれ?」


 もう一山頼もうと目線を向けると、そこにあったはずの山がひとつ残らず無くなっていた。


「だから終わったって言ったでしょ?」

「いや早すぎでしょ…」

「…リーフとゆっくりしたくて、ちょっと本気出しちゃった」


 ……そういうことサラッと言えちゃうのズル過ぎるよ。

 

「これ確認表ね」

「あ、ありがと。……結構間違い多かったんだね」


 パラパラと捲れば、訂正した箇所がちらほらと。


「何故か最終計算だけズレてるのが多かったよ」

「…それ多分研究疲れだと思う」

「あー…」


 わたしもこれ全部を自分だけで処理してたら、最後の方は疲れてミスしてただろうしね。不可抗力というやつだ。




 


 


 




 

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