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出来損ないと呼ばれた伯爵令嬢は出来損ないを望む  作者: かぐや
終わりの始まり
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「クー……?」

「…魔封弾、あと1発あったよね」

「あるけど…」

「それ、頂戴」


 サラが魔封弾を手渡し、クーリアはそのまま魔導銃に受け取った魔封弾を装填した。


「根源を、消す」

『……おね、ガい』


 ゆっくりとクーリアが精霊へと近付く。


『待って! ()そんなことをしたら』

「黙って」

『っ…』


 クーリアがリーヴォの発言を強く制止する。


「……いいの。元々、わたしは、もういないから」

「クー…? 何を言って…」


 サラが疑問の声をあげるが、クーリアはその声には耳を貸さず、ゆっくりと銃口を精霊へと向ける。


「これで、貴方がわたしに()()()ことも、やっと終わる」

『………』

「痛くはないはずだよ。……さようなら」


 クーリアの震える指が、引き金を引く。乾いた重い炸裂音が薄暗闇の森へ響き渡るとともに、強い光が辺りを包み込んだ。


『────────っ!』















「……終わった、の?」


 光が収まると、精霊の姿は消え去っていた。


「…これ、で、全部、元に…」


 クーリアがそう呟いたと思えば、突然その場へ倒れ込んだ。


「クー!」

「お姉ちゃん!」


 サラ達がクーリアへと駆け寄る。


「げほっ!……」

「血が…なんで…」


 クーリアが吐血する。それも、今までよりも濃い色をした血を。


「…これで、いいんだよ。わたしは、もういないはずだったんだ、から」

「え…?」

「あの、精霊が、助けたって言ったでしょ?…わたしは、ね。産まれる、前に、死んでたんだよ」

「「「っ!?」」」


 クーリアが、何故精霊がクーリアを助けたのかを静かに語り出す。


「精霊は、ボロボロだった」


 代償魔法の反動は、無論行使者である精霊も受けていた。


「だから、理性を失って、堕ちる前に、わたしに託した」


 いつか理性を失い堕ちた自分を、殺してもらう為に。


「でも、なんでクーが苦しまなきゃならないの!」

「…それは、わたしが、精霊の力だけで生きてたから、だよ」


 産まれる前に既に死んでいたはずのクーリアが、何故今まで生きていたのか。それは精霊が託した力を生命力に変えていたからだった。


「でも、それはあの精霊の、一部だから…」


 本体が消滅した今、クーリアの中にある精霊の力もまた、消滅しかけていた。


『…だから、全部ボクが貰うはずだった』


 リーヴォの存在理由。それはクーリアから精霊の力を引き剥がし、別の生命力を注ぎ込む為だった。

 

『別の生命力を注ぐには、精霊の力が邪魔だった』


 だからこそ、急いだ。しかし、事はそう上手く運んではくれなかった。


「サラ」

「…なに?」

「……わたしの、友達でいてくれて、ありがと」

「…っ! …ええそうよ、貴方はわたしの大切な友達。だからお願い……置いて、いかないで……」


 サラの瞳から輝く雫がこぼれ落ち、クーリアの服を濡らす。


「リーフ」

「…なぁ、に? お姉ちゃん…」

「不甲斐ない、お姉ちゃんで、ごめんね…」

「そんな事ないっ! お姉ちゃんは、わたしの憧れで、目標で…だから、だからっ!…ずっと、ずっと、傍に、いてよ…」


 リーフィアの頬を伝う雫を、クーリアがゆっくりと拭う。

 その後力なく垂れ下がろうとするクーリアのその手を、リーフィアが両手で受け止めた。

 

「ナターシャ、さん」

「…なにかしら」

「2人を、頼みます」


 ナターシャが、静かに頷く。


『主様は、ボクが送るよ』


 そう呟くリーヴォの姿は、もう既に消えかかっていた。

 

「いま、まで…ありがと…」

「嫌…いかないで…」


 サラがクーリアの体を強く抱きしめる。

 そして……リーヴォの姿が消えると同時に、クーリアはその瞳を、静かに閉じた。



 


 



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