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出来損ないと呼ばれた伯爵令嬢は出来損ないを望む  作者: かぐや
終わりの始まり
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「え…」


 クーリアが、いや、その場にいた全員が目を見開いた。可愛らしい鳴き声が聞こえたと思えば、先程まで荒れ狂っていたはずの蔦が全て地に落ちたのだから。


「リー、ヴォ?」

「ワンっ」


 クーリアに呼ばれたリーヴォは、元気な鳴き声と共に一目散に彼女の元へと駆け寄った。


「なんで、ここに……」


 クーリアが疑問の声をあげるが、当然ながらその疑問に答える声はない。




『そ、レ…なん、で…』


 掠れた声で、精霊が呟く。その瞳には、悲しみ、怒り、嘆き、そして……懐かしさ(・・・・)が浮かんでいた。


『もう、やめよう?』

「っ!?」


 その時、突如として響いた、幼い声。


「リーヴォ、なの…?」

『そうだよ、主様』


 リーヴォが精霊へと目線を向けながら、そう答える。

 響いた幼い声は、リーヴォのものだったのだ。


『…ボクのせいなんだ。あの子(・・・)が、こんな事を始めてしまったのは』

「…え?」


 クーリアが詳しく聞こうとするが、その前に精霊の声が響いた。


『やっパり、そウ、だ…いキテタ、』

「生きて…まさか」

『…ごめん。ずっと待たせた』


 その言葉が意味するのは…


『あるジ、サマ…』


 精霊が、もう枯れきってしまったはずの涙を流し、地面へとへたり込む。そこへリーヴォが静かに歩み寄った。


『……ごめん。君を置いて、そしてこんなにも待たせてしまって』

『…イい、かえっテきてクレたかラ。でモ…ナんデ…』

『それは、君のおかげでもあるんだ』

『ぇ…?』


 リーヴォがクーリアへと目線を向ける。


『君の力を、主様を通してもらった。だから、こうして君と話せるんだ』


 リーヴォはクーリアから、精霊の欠片の力を受け取ることで、精霊獣としての変革を遂げていたのだ。


「だから、軽かったんだ…」

『実体はあってないようなものだから』


 クーリアはやっと腑に落ちた。リーヴォの正体について。魔力を糧とする動物など、存在しないのだから。


『さぁ、終わらせよう』

『……そレは、むり、ダヨ……もウ、テオくれ』

「…っ!?」

『わたシは、堕ちテ、しまッタかラ…もウ、むり、だヨ…』


 堕ちてしまった精霊は、もう戻ることは許されない。そして、その力もまた、制御することは出来ない。

 魔の氾濫は、堕ちた精霊の憎悪に染まった魔力が引き起こしたもの。それを精霊自身がどうにかすることは出来なかったのだ。



「そんな……じゃあ、どうすれば……」


 サラ達が絶望の表情を浮かべる中、クーリアだけは、ただ真っ直ぐと精霊を見つめていた。


「…大丈夫。わたしが、終わらせるよ」





 



 

 

 





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