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出来損ないと呼ばれた伯爵令嬢は出来損ないを望む  作者: かぐや
終わりの始まり
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 森の奥へとひた走る。途中魔獣にも遭遇したが、まるでクーリアが見えていないかのように通り過ぎて行った。


(それだけ、執念に駆られている)


 クーリアの事よりも、やらなければならないこと。

 それは、


(復讐……)


 クーリアは直感として、そのことを感じ取った。

 何に、誰に。そんなことは分からない。あるのは、ただただ暗く、深く、沼のような、悲しみと怒り。


「っ!?」


 ふいに足がもつれ、倒れ込む。そろそろこの体も限界のようだ。それでも、クーリアは立ち上がる。魔力を限界まで体に流し、まるで自分自身の体を操るように。


 だがその時。クーリアの目の前に立ちはだかった、大きな影。


「グォォォンッ!!」

「ちっ…」


 短く舌打ちをする。魔獣に気付かれた。

 熊型の魔獣が腕を振り上げる。クーリアがその場から飛び去った瞬間、魔獣の腕が振り下ろされ、地面が爆発した。


「あぐっ!?」


 爆風でクーリアの体が吹き飛ばされ、木に叩きつけられた。


(不味い……っ)


 けほっ、とクーリアが血を吐く。内臓は無事そうだが、骨がいくらか折れてしまったようだ。起き上がろうとすると激痛が走る。


 それでも、クーリアは魔導銃を構える。装填されている弾丸は、クーリアが作った特殊なもの。試し打ちはしていない。ぶっつけ本番だが、やるしかない。


「グォォォンッ!!」

「っ!」


 引き金を引く。一瞬の間を置いて放たれた弾丸は、魔獣の胸に吸い込まれる。――だが、何も起こらない。魔獣も、止まらない。


(失敗、した…)


 絶望に染まるクーリアの視界に、腕を振り上げた魔獣が映る。

 クーリアが死を覚悟し、目を閉じた。










「……ん?」


 衝撃を覚悟し目を閉じたものの、クーリアに襲いかかったのは衝撃ではなく、生暖かい液体。

 恐る恐るクーリアが目を開ける。するとそこには、胸に大穴を開けて倒れる魔獣の姿があった。


「よかったぁ……」


 思わずそのまま地面に寝転がる。

 クーリアが先程使った弾丸は、遅延式爆裂弾というものだ。その名の通り、放たれてから一定の時間を空け、爆発する。


(体内で爆発するんだから、そらこんな穴空くよね)


 本来の爆裂弾は着弾してすぐに爆発するので、こんな大穴が空くことは無い。体内で爆発するからこその威力なのだ。


「よいしょ…っと」


 傷を癒して立ち上がる。魔力の消耗が、思ったよりも激しい。


(……ちょっと、休憩するかな)


 魔力切れはすなわち、クーリアの死を意味する。それは魔獣に殺されてしまうから……ではない。魔力で今の体を維持しているからだ。つまり切れれば、クーリアの体は崩壊する。


「…いないよね」


 周りの気配を探り、魔獣が近くにいないことを確認する。


「……いや、ちょっと離れよ」


 流石に魔獣の死骸がある場所では休めないので、少し離れたところで休憩することにしたのだった。








 

 

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