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出来損ないと呼ばれた伯爵令嬢は出来損ないを望む  作者: かぐや
終わりの始まり
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105

 ドパンッ!


 静寂な森を切り裂くように響く、重い炸裂音。


「はぁ…はぁ…」


 クーリアは、馬車から飛び降りた際に出来た擦り傷もそのままに、森の中を全力で走っていた。

 その後ろをピッタリと三体の魔獣が追随する。クーリアがそれらに向けて魔導銃の引き金を引くが、少し距離がある為に躱されてしまった。

 馬車から飛び降りた時、魔獣は四体居たのだが、その内の一体はもう既に撃ち抜いた。だが、その結果警戒を強められてしまい、当たらない。


「ちっ…」


 クーリアが短く舌打ちする。魔導銃の弾数は無限では無いのだ。無駄には出来ない。矢は既に撃ち切ってしまった。


 クーリアを追随する魔獣は2種類。一体は、紫色の鱗を纏った巨大な蛇型の魔獣で、最初に倒したのもこの種類だ。

 あとの二体は同じ種類で、クーリア達が以前遭遇した猿型魔獣の上位個体。力が強く、体が大きい割にすばしっこい。

 この三体から今の所クーリアが逃げれているのは、クーリアが魔力で自身を強化しているからだった。

 

「げっ!?」


 森の中を走りながら、クーリアが声を上げる。その理由が……こちらへと近付いてくる、別の魔獣を感知したからだった。

 数は四。馬車の進行方向にいた魔獣だったが、どうやら諦めて戻ってきたようだ。こちらに気付いているかは不明だが、もし気付かれていなかったとしても、こうも派手にやり合っていてはいずれ気付かれる。


(…まぁ、諦めるつもりもないけどねっ!)


「《リ・ゾーン》っ!」


 自身に掛けていた強化を、さらに上掛けする。

 ……だが、それは危険な賭け。

 強化するとはいえ、体力や精神が回復する訳では無い。魔力も馬車の方に割いている影響で、そう多く残ってはいない。

 体力と魔力。そのどちらが切れた瞬間、クーリアの負けが決定してしまう。それ故の、危険な賭け。





(……っ!? 魔力が…)


 突如、クーリアに重い負荷を掛けていた魔力消費が和らぐ。どうやら、サラ達が王都に無事到着したようだ。それにより掛けられていた魔法は解除。クーリアに少し、余裕が生まれる。


(次弾装填…)


 ポーチから次の弾を取り出し、魔導銃に装填する。だが、もし撃てば先程のように躱されてしまうだろう。

 ……しかし、クーリアが狙ったのは、魔獣本体ではなかった。


 ドパンッ!


 クーリアが、()()()()()()引き金を引く。次の瞬間、重い炸裂音が響き、黄色い光の筋を伸ばしながら、1発の弾丸が空高く撃ち上げられた。 

 ……そして、その弾丸が上空で破裂した瞬間。


『━━━━━っ!』


 辺りが、白に支配される。強力な閃光。


「「「ギャァァァァ!!!」」」


 その閃光を直接見てしまった魔獣達は、目が焼ける痛みに断末魔を上げ、のたうち回る。


(よしっ!)


 閃光弾が炸裂する瞬間、クーリアは目を固く閉じていた。

 もし失敗していたら。そんな可能性は考えない、捨て身の攻撃。だが、これがなんとか功を奏し、魔獣達を足止めすることに成功した。


(今のうちに…っ!)


 クーリアは未だのたうち回る魔獣を後目に、森のさらに奥へと走り去った。






 


 

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