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出来損ないと呼ばれた伯爵令嬢は出来損ないを望む  作者: かぐや
学園 高等部2年 校外実習編
107/136

102

 次の日。男子2人は晴れやかな顔で朝を迎えていた……が、ほかの面々の顔色は、少し暗い。

 無理もない話だ。昨日の会話の内容からすれば…。


「ど、どうした?」


 そんな暗い様子に気付き、ヴィクターが心配そうに声をかける。


「…何でもないよ、ちょっと夜更かししちゃって」


 そう答えたのはクーリアだった。

 …まぁ、寝れなかったのは確かだ。


「大丈夫か?」

「大丈夫よ。ちゃんと仕事はするから…」

「なら、いいが…無理するなよ?」

「分かってます」


 そして朝食をとろうと思ったが、担当のクーリアは疲れた様子であったが為に干し肉のみとなった。


「ごめんね…」


 申し訳なさそうにクーリアがそう言う。


「何言ってんだよ。ずっと作ってくれてただろ。休んでくれよ」

「…分かった。ありがと」


 クーリアが小さく微笑み、感謝の気持ちを伝える。

 そんな穏やかな微笑みを間近で見ることとなったヴィクターは、ほんの少し顔を赤く染めた。

 ……しかしながら、サラとリーフィア、2人の睨みつけるような眼差しを受け、すぐにその赤は引っ込んだ。




「じゃあ出すぞ」


 ヴィクターの掛け声で馬車が進む。順調に進めば、今日の昼頃には着けるはずだ。




「……ボク、御者台行くね」


 馬車の幌の中にいたイルミーナだったが、中の異様な雰囲気に堪らず御者台へと逃げた。

 その異様な雰囲気というのが…全員、何かを考えるように遠くを見つめていたのだ。怖い、怖すぎる。

 ……しかし、全員が考えていたことは、ほぼ同一のことであった。


((((…絶対、見つけてみせる))))


 一体、何を見つけるというのか。それは、昨日のナターシャの発言にあった……。



◆◆◆



「クーちゃんの命を救う、ただ1つの方法。それはね……精霊を見つけることよ」

「「「精霊?」」」


 話を黙って聞いていた3人が、同じように首を傾げる。

 精霊。それは、世界の何処かに存在し、この世界を調整している存在である。しかしながら、彼らは姿を見せない。気まぐれで見せることもあるが、それもほぼ奇跡と言っていい。


「何故、精霊を見つけることがクーを救うことになるんですか?」


 サラの疑問は最もだ。


「精霊はね、魔力を糧とするの」

「魔力を…?」

「そう。だからクーちゃんには……精霊と、()()して貰いたいの」

「「「っ!?」」」


 精霊と契約を交わす。それは、とてつもなく稀有なこと。

 一般的に精霊は人間よりも力を持つ。契約するメリットが無いのだ。

 ……だが、メリットがあれば?


「そっか……クーの魔力量なら」


 そう。クーリアは魔力崩壊病を患うほど、魔力量が多い。そして、精霊は魔力を糧として生きている。その為、契約を交わすならば、主がそれを与える必要があるのだ。

 魔力を常に消費することにより、魔力崩壊病を抑えることが可能になる。ナターシャは、それに賭けるつもりなのだ。

 ……しかし、そう簡単なことでは無い。

 まず精霊そのものを見つけることが必要だが、それ自体が困難であること。

 次に、見つけたと言っても、クーリアと契約してくれるかは不明だということ。

 最後に……クーリア自身に危険が伴うということだ。

 魔力は生命力。失えば死ぬ。もし精霊が求める魔力が、クーリアの魔力量を超えた場合……待ち受けるは、死のみ。


「…クーは、どうしたい?」


 最悪この手段を取ったことで、まだ生きれるはずの命を落とすかもしれない。この方法を実行するか否かの判断は、本人に任せなければならない。


「……わたしは、まだ生きたい。これからも、みんなと、一緒に…」


 それが、クーリアの本心だった。

 諦めて死ぬ覚悟を決めていた時に見えた、僅かな希望。それに、賭けでも縋ることを決めた。

 まだ、みんなと、いたいから。


「……わたしの方で目星をつけてある場所があるの。……一緒に、行く?」

「「「もちろん」」です」


 皆の気持ちは、1つだった。






 

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