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出来損ないと呼ばれた伯爵令嬢は出来損ないを望む  作者: かぐや
学園 高等部2年 校外実習編
106/136

101※

 ……わたしは、その場から静かに立ち去る。


「……あら。おかえりなさい」


 帰ってきたわたしに対して、ナターシャさんがそう話しかけてきた。


「……ナターシャさん。ひとつ聞きたいことがあります」

「……いいわよ。大方、何を聞きたいのかは予想できるけれどね」

「……『魔力崩壊病』を治す方法は、ありますか」


 そう聞くと、ナターシャさんはまるでその質問に答えたくないような、悔しげな表情を浮かべた。


「……今のところ、原因すら判明していない病よ。無論治療法も発見されていないわ。……あまり、勧められる手段ではないけれど、一応延命する方法は存在するけどね」

「……」


 わたしだって、その事は知っている。伊達に勉強はしていないし……悲しくも、最も良く知られた病だからだ。

 ……でも、だからこそ聞きたかった。もしかしたら、ナターシャさんなら知っているんじゃないか、と。

 しかし、その希望は、いとも簡単に砕け散った。


「……あまり、あの子を責めないでね。ずっと苦しんでいたんだから」


 わたしが顔を俯かせていると、ナターシャさんがそう口にした。


「……知っていたんですね」

「寧ろ気付かないほうがおかしいわよ。だってあの『賢者様』に気に入られてるのよ?魔法で誤魔化せる訳ないじゃない」


 ……その通りだ。あのお姉ちゃんの魔法による誤魔化し方では、まず間違いなく気付かれる。


「……じゃあ、あの薬は」

「わたしが手配したものよ。流石に簡単には手に入らなかったけれどね」


 それは当然だろう。わたしの予想通りなら、あの薬は……この国で禁止された薬のはずなのだから。


「もちろんおじいちゃんから国に届けは出ているから、問題はないわ」

「……せめて家族にくらい、教えてくれても…」

「……ごめんなさい。本当は教えるつもりだったの。けれど……あの子が嫌がったのよ。『今から悲しまれては辛いだけだ』…ってね」


 ……お姉ちゃんなら、確かにそう言うかもしれない。でもやはり…独りで、抱え込まないで欲しかった。話して欲しかった。相談して欲しかった。

 ……助けてって、頼って欲しかった。


「……今更わたしがこんな事を言うのもおかしな話なのだけれど……まだ、時間はあるわ」

「……希望は、あるんですか」

「……一つだけなら、心当たりがあるわ」


 一つだけ…


「…そのはな「その話、詳しく聞かせてくれますか?」」


 わたしの言葉に被せられた声。聞こえた方へと振り向くと……そこには、森から出てきたサラさんとお姉ちゃんがいた。


「…リーフにまで、気付かれちゃったか」


 わたしのことを見て、お姉ちゃんがそう呟いた。


「…ごめんね。言えなくて」

「……いいの。()()()()()()()()気付けたから」


 ナターシャさんが言った通り、まだ、まだ時間はあるんだから。


「……そう、だね。……ナターシャさん。わたしが助かるっていう方法、教えてくれますか?」

「……ええ」


 そう言ってナターシャさんが話し始めた、のだけれど……それは本当に、砂浜に落とした1つの砂粒を探すような、不可能に等しい手段だった。








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