第5話
ジョリジョリ…。 ジョリジョリ…。 ジョリジョリ!?
その不思議な音に目を覚ました私。もう何なの!? 気が狂いそう…。侍女のユカが私のムダ毛を処理していた!?
勝手に部屋に入って。人の裸を触って。人のムダ毛を処理!? プ、プライベートな空間は存在しないのですか!?
「帝国では許されているのは、首より上の髪の毛、まつげ、眉毛だけです。ケイト様のお肌に合う脱毛剤が理解りませんでしたので、今回は剃らせて頂きました。今度お店に行って調べてもらいましょう。ムダ毛の処理もなしでは、ローハン様もお手を出す気にはならなかったのでしょね」
文句を言ったつもりが、ローハンと同じく全く通用しない。帝国民は自分の立場や仕事に対する絶対的な責任感が強すぎる気がします。
「あ、あの…。私は…そういうの…したくないです…」
「順位的にはケイト様よりローハン様が上でございますから、求められた場合、拒否することは叶いません」
ローハンが…性に一切興味がない、魔法馬鹿でよかったです…。
「さて、ローハン様は朝食を取りませんので、ケイト様だけになります。どうか一階の食堂へお願いします」
あっ? 体が軽い…。ベッドから下りただけで違いがわかった。これが…魔力の…ナントカ!? 悔しいけど、ローハンの実力の片鱗をみてしまった気がしたのです。
ふんわりとした柔らかいパン。食べたことのない野菜がたっぷり入ったスープ。スクランブルエッグにカリカリのベーコン。冷たいヨーグルトと…。
「これは…カレデンの茶葉?」
「はい。ケイト様の慣れ親しんだ茶葉を取り寄せました」
「ありがとう…。もう、二度と飲めないと思っていたの…」
美味しいご飯を食べて、やる気が出たところで、魔法の修行を開始する。
『第一章 魔力の導入』を開く。そこには魔力を感じることが重要だと書かれている。肉体の中を流れるエネルギーである魔力を感じることが第一歩であるが、それが一番難しいらしい。感じ方は人それぞれで、一概に手順や方法を確立できないためだ。
起きて体が軽い。つまり魔力による変化はあった。だから魔力はあるはず。
カレデン家では、『火』に関する『詠唱』により魔法を発動させるのだが、それには『詠唱』と『属性』と『魔力』を結びつける『印』を体に刻み込む必要があった。逆に言えば、それだけで魔法が使えるのだ。
しかし、私は…本当の魔法を学んでいるのだ。魔法の本質を見極めなければ…。
魔力に語りかけるため、語りかけるべき魔力を認知しなければならない。そういうことでしょ?
だが、ローハンとの質問タイムが来ても、ケイトには魔力を感じることが出来なかった。
「先人たちも一番苦労したのが、魔力を見つけることだからね。簡単にはいかないよ。僕だって、すぐには出来なかったからね。一日やそこらで出来たら、『詠唱』とか発展してないから…」
確かにその通りだ。あまりに習得時間がかかりすぎるから…先人たちは『詠唱』を編み出したのだ。私が…一日で挫けるなんて、ありえません。出来なくて当たり前なんですから!!
私は魔力探しの修行は始まったばかりなのです。