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プロローグ

 贅の限りを尽くした豪華絢爛な仮面舞踏会の会場には、その優雅さに似合う貴族たちが、独立都市カレデンを治める子爵バレン・カレデンに取り入ろうと、水面下で無数の駆け引きや罠を張り巡らせていた。


 その有象無象の滑稽な様を当のバレン・カレデンは冷めた目で眺めため息をつく。


 やがて宮廷舞踏会にも匹敵すると謳われた独立都市カレデンの舞踏会の盛り上がりもピークに達しようとして時、床に一本のピンクの毛糸が青白い光を放ちながら何処からとも無く現れた。


 シンプルだが巧みなデザインの見事なイブニングドレスで着飾った一人の女性が、その不思議なピンク毛の糸を指差すと、パーティー会場にいる半数以上の者たちが、そのピンクの毛糸に釘付けとなる。


 ピンク毛糸は見られていると意識していないのか、スルスルと直径5m程の円を描くように伸び続けていた。完全な円を描いたピンクの毛糸は、その円の内部に六芒星を描き、さらに幾何学模様と古代文字を描き加えた。


「魔法陣だ!」誰かが叫んだ。


 するとドシン!!と大きく建物が揺れ、美しい大きな屋敷の窓ガラスは粉々に飛び散り、天井からは巨大なシャンデリアが落下した。殆どの者が、その場に倒れ、床に体を打ち付けた。


 ガラスの破片やシャンデリアの落下により、多数の負傷が出た。パーティー会場は一気に阿鼻叫喚の地獄絵図となるが、いち早く立ち上がり外に逃げ出そうとした男が、屋敷の外を見て叫ぶ。


「じ、地獄だ!!!!!」


 屋敷の外は、真っ赤に燃えるマグマが川を造り、遠くには複数の噴火した火山から、これまた真っ赤に燃えるマグマが垂れ流されていた。


 そして、一際大きな爆発音が火山から聞こえる。また別の火山が大噴火を起こしたのだ。飛び散る火山弾が屋敷を襲うが、なんと屋敷全体に結界が張られ護っていたのだ。


「ご安心ください。火山などで殺しはしません」


 床に描かれた魔法陣の上にゲートが出現し、その中から一目で帝国の貴族だと理解る衣装を身に纏った青年がと少女が現れた。


 バレン・カレデンは、その二人の人物のどちらとも面識があった。二人は魔法陣から出ると、バレン・カレデンに向けて歩き出す。


「一番大きな魔法陣は屋敷全体を火山地帯に転移させ、二番目の魔法陣は外部からの攻撃を一切通さない結界を造り、三番目の魔法陣は内外の通行を遮断し、そして四番目の魔法陣でゲートを作成し、私達が…ここに来たということです。この素晴らしい『毛糸』の属性を持つ、ケイトに惜しみない拍手を送ってください。元、ケイトの父上殿…」


 青年の紹介で一歩前に出た漆黒のローブに見を包んだケイト。


「愚かで脆弱なカレデン家を滅ぼすために戻って参りました」


 代々カレデン家は『火』に纏わる属性を生み出す由緒ある家系だ。その中でもバレン・カレデンは特に強い『爆炎』の属性を持つ。バレン・カレデンは無言で、元娘であったケイトに爆破の魔法を放った。しかし、爆風はケイトに届かない。ケイトの周囲には瞬時にピンクの毛糸により結界が張り巡らされていたのだ。


「火、火、火。これが由緒ある火でしょうか? 毛糸の結界を燃やせない…そんな程度の属性で、よくもまぁ…私を屋敷から追い出せたものですね?」


 薄ら笑うケイトに幾つかの人影が近寄る。そして、カレデン家の家名を持つ兄妹や親戚などが、ケイトを包囲した。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 手を繋いで抱き締めて、頬釣りして頭を撫でて 大丈夫、大丈夫と慰めたい。 ノクターン版はそんな物語でした。 なろう版では救いをと願います。 読ませていただきありがとうございました。
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