恋人と友達と幼馴染の関係(5)
「天城、今週の公衆衛生のレポートやったか?わからないところを教えて欲しいんだが」
「大和、高校の時のバレー部だった伊勢、覚えてるか?今日この後で集まる約束なんだ。お前も来い」
次の日から、俺はなんやかんや理由をつけては、天城か大和のどちらかと積極的に行動を共にするようにした。
こうすれば、二人が接触する機会が減る。
灯里には悪いが、しばらく大和には俺に構ってもらうことにした。
――――――――――
「……長門くん、ちょっといいかしら」
「なんだ?」
三週間が経った。
今日も今日とて、天城に生理検査学のレポートを見せてもらっていた。
ちなみに、わざと勉強が出来ないフリをしているわけでもなんでもなく、実際、大和や灯里と比べて俺は勉強が苦手だった。
そして天城は、どうやらそれなりに勉強が出来るほうらしかった。
「どうして私の邪魔をするのかしら」
「なんのことだ?俺はただ勉強が苦手だから、天城や大和に教えてもらってるだけで」
「とぼけないでよ」
天城が上目遣いで睨んでくる。
俺もレポートの手を止めて、天城を見た。
「どうして邪魔するのよ。長門くんには関係ないじゃない」
「関係なくはない。言ったろ、俺たちは幼馴染で、家も近所の、長い付き合いなんだ。下手に弄られるのは、歓迎できない」
「ねえ、もしかして私のこと好きなの?」
「は……はあ?!」
天城は困ったように眉を寄せる。
「あのね。自慢じゃないけど、私モテるの。今まで何度告白されて、お断りしてきたか覚えてないわ」
まあ、そうだろう。
美人は三日で飽きるというが、あれは嘘だな。天城を見ていれば思う。
昔を思い出して憂鬱そうなその表情さえ美しく、まるで映画のワンシーンのようで無駄がない。
「長門くん、別に顔が悪いわけじゃないと思うけど、正直、長門くん程度のレベルでは、箸にも棒にもかからないわ」
「急に辛辣なの止めて!」
これたぶん本音で言ってるだろ。余計に傷つくわ!
「いや。違うから。お前のこと狙ってるとかじゃないから」
「そうなの?」
「そうだよ。ていうか、その『世の中の男共はどうせ私を好きになる』みたいなのやめろ。そうじゃない奴だっているだろ」
「そう?私が知る限り、いなかったけど」
「いるんだよ。例えばここに、俺とか、あと大和とかな」
なんて奴だ。
これだけ自信たっぷりになれる程、好意を寄せられてきたんだろう。男は美人に弱いからな。
でも、そうじゃない奴もいる。
ずっと、一人のことを一途に想い続けているような男もいる。
灯里の顔が浮かんで、胸がキュッと締まった。
……大和は、灯里を裏切らない。
「……そうね、確かに。大和くん、少しも私に興味を持ってくれないもの。このやり方じゃあ、駄目だとは思っていたところよ」
「ならもう諦めて――」
「だから長門くん。私たち、お付き合いしましょう」