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ブラックは18歳から。  作者: ねじお
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面接連絡は突然に

初めて書いてみました、ただ何となくです。

札幌の割と有名な喫茶店で3年程アルバイトをしていた。


理由は「家から近かったから」ただそれだけ。

家の近所に古びた家屋を再利用して、そこに喫茶店があったのは昔から知っていたんだけど、大きな木に覆われていて鬱蒼とした雰囲気がまるで「近づくな」と言わんばかりで好きじゃなかった。

もう、あれから十数年経っているのにあの場所で出会った人達の事をよく思い出す。






大学に入学して少し慣れてきた5月、札幌はまだ寒いものの風は冬のそれとは違い、これから来るであろう暖かな日差しを思い起こさせる柔らかいものだ。それはバイクに乗っていると良くわかる。


兄に憧れて高校を卒業したらバイクの免許を取って、バイクを買う。という目標を立てた結果、勉強よりもアルバイトの方がお金が手に入るという楽しさの方が大きくて、高校では友達と遊ぶよりもバイトに精を出して友達付き合いは悪い方だった。まぁそれは多少後悔はしているものの、今現実としてMAGNAという250ccのアメリカンタイプのバイクを手にしている事の満足感の方が強かった。


「5月だけど今日も寒いなぁ…」


と言いながらも走る事が楽しくて、定例の安売りスーパーへバイクを走らせた。


土日の警備アルバイト以外にも追加で働かないと、奨学金だけでは大学に通えないし親と仲の悪かった自分は、食事も全部自分で買って自分で作って食べてた。バイクの維持費も掛かるし、それくらいにはお金が必要だった。



そんなある日、コンビニで求人情報誌をあさっていると見たことのある住所が目についた。


自分の家にほど近い住所で、名前からしてあの鬱蒼とした建物であることが分かった。時給は殆ど最低賃金で週3〜4程度、17時〜22時迄、正直大した稼げない。ただ「休憩あり、軽食付き」に惹かれた部分があった。

平日は大学で講義があるけど曜日によっては働けるし、土日の警備バイトは16:30には終わるから急げば何とか間に合うだろうと考えて、コンビニの駐車場に停めてある愛車に腰を掛け、買ったばかりの携帯で早速連絡をした。


昼過ぎで忙しいのか何度か呼び出し音が鳴っている。


出ない。


面接希望とはいえ応募連絡は慣れない。時間が長いのは嫌だ。

客ならまだしも、受かるか受からないかそんな曖昧な状態、場合によってはもう自分じゃない誰かが採用されている事だって有り得る。結果が早く欲しい…そんな事が頭を巡っている中





「お待たせして申し訳ありません、札幌珈琲です。」


出たのは喫茶店らしい柔らかく、静かな大人の女性の声だった。


大学の友人やたまに入る肉体労働バイト先の職人さんか、警備バイトのおっさん達ぐらいしか話さないし、喫茶店やカフェと呼ばれるようなフワフワした様な場所には縁が無いし、近寄らないため電話越しに伝わる「大人の女性」感にどぎまぎしながら


「あの、求人情報誌みたんですけど…まだ募集してますか?」

と、良くある電話確認のテンプレを伝えると向こうも「店長に変わる」という予想通りのフレーズを伝えてくれた。



保留にもならず直ぐ店長と思しき男性の声で



「今日面接これますか?」



驚いた。

この流れならまずは「お名前は?喫茶店で働いた事ある?」といった確認事項を伝えた上で面接日、時間の設定だろう。まさか開口一番に向こうから面接日程を、しかも今日。喫茶店のイメージとは随分離れた忙しい所なのだろうか…自分の心音が携帯に当てている耳から聞こえる。履歴書も用意してないし、ヘルメットを被ってるから髪も潰れていてとても今から面接は出来ない。


「いや、まだ履歴書も用意してないですし今からはちょっと…」と、言葉を濁すと


「あ、今からじゃ無くていいので“今日”来れますか?何時でもいいので。」


喫茶店の店長らしく穏やかな口調ではあるが失敗した。

店長は「今から」ではなく「今日」と言っていたのに気持ちが先行して勘違いをしてしまった。

ともかく、向こうから面接してくれると言ってくれているタイミングを逃すわけにはいかない。


「あ〜では20時くらいは如何でしょうか?履歴書も今から書くので…」ととっさに切り返すと


「わかりました、では20時にお待ちしてます。場所はわかります?入口入ったらスタッフいるので、面接の旨伝えてくればわかる様にしておきますね。それではまた。」


と、伝えたい事だけ伝えてさっさと電話が終わった。

やはりイメージとは異なり忙しいのだろうか…多少の不安を感じながらもバイクから腰を離し、再びコンビニの入口へと足を進め履歴書を買いに行くのであった。






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