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9.サキュバスはビッチ

 吾輩は魔王である。側近はサキュバスである。……サキュバスってそんなに強い魔物というわけでもないはずなのだが、なぜ吾輩の側近をやっているのだろうか?


「何かご不満でしょうか?」

「そ、そんなことはないぞ」


 側近からの圧力。なぜかこの雰囲気になると逆らえる気がしない。

 サキュバスがため息をついた。


「……私、魔王様に認められていないのかしら」

「何か言ったか?」

「いいえ何も」


 そういうわりに少し落ち込んでいるようなのだが。

 そういえばと、この間ゴブリンから聞いたことを思い出す。


「側近よ」

「何でしょうか?」

「もしかして男に飢えておるのか?」

「うぇ!?」


 側近は奇妙な呻き声を漏らす。


「いや、サキュバスは人間の男の精力を吸い取って自らの糧とするのだろう? 側近はずっと魔王城にいるのだから男に飢えているのだと思ってな」

「……」


 なぜ黙るのか。

 いや、ここは魔王として側近には元気を出してもらわねば困るからな。なんとかしてやろう。


「せっかくだ。その辺の町にでも行ってくるがよい。存分に男漁りをしてくるがよいぞ」

「私をビッチみたいに言わないでください!」


 なぜか怒られてしまった。解せぬ。

 吾輩は魔王として側近のことを考えたのだが。本人にうまく伝わっていないようだ。


「しかしサキュバスは男に跨らなければ力が出ないのであろう?」

「それ偏見ですからね! サキュバスに対しての偏見ですからね!!」

「む、そうなのか?」


 吾輩は間違っていたのだろうか? おかしい。ちゃんと確認はしたはずなのだが。


「この間ゴブリンから聞いたことなのだがなぁ」

「ほう……魔王様になんてことを吹き込みやがって。あのクソザコども、ぶっ殺してやるわ」


 禍々しいオーラが側近の背後から立ち昇ってきた。吾輩ですら冷汗をかいてしまうほどだ。


「私、少し用事ができましたので外させてもらいますね」


 笑顔が怖いぞ。

 背中を見せた側近に吾輩は何も言えなかった。


「……魔王様」


 と、思っていたら側近は振り向いた。


「か、勘違いしてほしくないから言っておきますけど、私男に跨ったことなんてないですからねっ」

「う、うむ」

「処女ですからっ。まったくもって未経験ですのでっ。私は魔王様に……っ」

「ま、まあ落ち着け側近よ」

「はっ!? わ、私は何を……っ!」


 側近は顔を赤くしてわたわたと慌てる。落ち着けと言ったはずなのだが。


「し、失礼しますっ」


 側近は退出する。吾輩は息をついた。


「いつもながら側近の相手は疲れる」


 そう呟いた時、側近が戻ってきた。聞かれたのかと思ってギクリとしてしまう。


「魔王様」

「な、なんだ側近よ?」


 吾輩の側近はニコリと笑った。


「側近ではなくラスティアとお呼びください」


 吾輩の側近はいつも通りの側近であった。



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