三雲ルート エピローグ
真梨亜を紫吹の魔の手から救ってからもう三年が経っていた。
あの後自宅に帰るまで一苦労だったけど、それなりに良い思い出になった、ドレスを着た少女とスーツを着ていた少年がイチャイチャしながら街を歩いていたというのは傍目から見たらおかしかっただろう。
でも幸せな雰囲気が伝わってくれれば別に良い。
俺と真梨亜は正和からの許しを得て付き合うことになり、同じ大学にも行けるようになった。
正和の口から三雲財閥の娘である真梨亜に不純な動機で近づいてこようとする人間もいるから、ずっと傍にいろと言ってきた時には俺たちは思わず嬉し泣きをした。
てっきり付き合うことを反対されると思っていたから、正和を説得をする方法を百通り考えていていたのに……
俺と真梨亜は大学で金持ちと一般人の格差カップルとして名前が知れ渡っていて、正直学内では居心地が悪いけど真梨亜といっしょにいれるからストレスではない。
「やっぱりここの海は静かだなぁ」
大学が終わったあと、俺は三年前に来た海に来ていた。
海の音を聞きながら真梨亜と出会った時のことを思い出す。
朝、校門前で叶枝と話をしていた時に真梨亜は俺たちを注意にしに来た。
あの時は嫌味な女だなと思っていたし、コイツといっしょの学園生活は送りたくないと感じていたのに運命の赤い糸で結ばれていたのか俺は真梨亜の能力で入れ替わる。
まさか自分と同じ能力を持った人物がいるとは思っていなかったから、この時少しだけ真梨亜に親近感が湧いていた。
入れ替わりをした後遺症で入れ替わりの残滓を消すために生徒会に加入をしろと言われた時は運が無いと思った。
自分も能力を持っていたのに普通の生活を送りたいと思っていたのが間違いだったんだけどな。
生徒会に入ってからも辞める機会を伺ってたら、真梨亜と同じ三日之神の能力を持った東雲たちが現れた。
彼女たちは自分の悩みを三日之神によって能力に変化させられていて心に傷を負っていた。
俺は真梨亜の能力が東雲たちの能力に共通しているのではないかと疑い、気づかれないように真梨亜について情報をこっそり集めていた。
自分自身、どうして嫌味なやつのことを調べているんだと我に返ったこともある。
でも真梨亜が東雲たちの悩みに自分を犠牲にして真摯に向き合っているところを見て、少しだけ真梨亜に興味が湧いていた。
そして時間が経つにつれて真梨亜も三日之神の呪いに侵されていることを竜宮寺さんに教えてもらう。
「もし、真梨亜に興味が湧いていなかったら運命が変わっていたのか?」
「何が興味が湧いたって?」
声がしたから振り返ったてみると、真梨亜が立っていた。
真梨亜は高校生の頃と比べると髪は結んでいて、スポーティな雰囲気を醸し出していた。
肌も少し焼けていたのを見ると運動部にまた助っ人に行ったのかな?
「真梨亜?! お前講義はどうしたんだよ?」
「休講になったって連絡はしたんだけどなぁ、ハジメくんもスマホをあまり見ない癖は直ってないみたいね」
向日葵のように明るい笑顔を振りまく真梨亜は昔と比べると沢山笑うようになっていた。
「確かに連絡あったな……」
「まあ別にいいわよ、抜けているところも可愛いらしいわ」
可愛いという言葉をあまり言われ慣れていないから顔がタコのように赤くなっていた。
俺は赤くなっていたのを誤魔化すために近くにいた学生を指をさす。
「あ、あそこにいる二人を見てみなよ」
「ん?」
俺たちの近くにいた学生たちはまるで昔の真梨亜と俺に似ていた。
女の子はクールそうに振舞っているけど、連れの男の様子を気にしている素振りをしていて男の子は女の子に振り回されながらも嫌がっている様子はなかった。
「……まるで昔を思い出すわね」
「あの二人もきっと色々なトラブルを巻きこまれるかもしれないけど、乗り越えることができるかもね」
彼らに幸せが訪れるように願っておこう。
俺は空が暗くなるまで真梨亜といっしょに時間を忘れてしまうぐらい楽しく話をした。
以前俺は真梨亜に嘘はつかないと約束をしたが、それを破る時がきてしまった。
俺の能力が真梨亜と付き合ってから使えなくなった、あんまり考えたくはないが少しだけ使えなくなった理由に心当たりがある。
三日之神の神社跡に行くしかない。
全ては……竜宮寺さんが知っているからだ。
ごめんな、真梨亜。




