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三雲ルート⑫

 01


 山本と吉澤が所定の位置に着いたのを確認した俺は嫌になるほど騒がしい披露宴の方を見ていた。

 俺たちとは住む世界の人間たちが薄汚い笑みを浮かべながら、金であそこを買い取った、私の友達の芸能人がなど自分の地位をあげるためにマウントの取り合いをしていた。

 誰も真莉愛を眼中に入れていない。

 新郎の紫吹は真莉愛の近くに寄ってくる男を退かさずに自由にさせており、いやらしい手つきをしながら肩を組んでいても誰も止めはしなかった。

 真莉愛は嫌な顔をせず、ずっと無表情だった。

 普通なら嫌がる素振りをするのに真莉愛は何もしないから、下品な人間は図に乗る。

 赤城や紫吹が真莉愛の呪いの原因を知って悪化させたせいで、生きる意志を無くした人形になってしまった。

 今すぐにでも助けにいきたいところだけど、歯ぎしりを立てながら堪えた。

 くそ……絶対助けてやるからな!

 俺は能力を使って紫吹の周りにいる連中の姿を見てみると、皆嘘をついていた。

 自分たちより財がある紫吹に表上は媚を売っているが、心の中ではいつ裏切ってやるかなど考えているのか?

 ……いつもだったら走っていって真莉愛の近くにいる奴らを片っ端からぶん殴っていた。

 だが今は違う、コイツらが媚びへつらう紫吹や赤城の弱みを俺は持っている。

 力ではなく、頭で戦うべきなんだ。


 そういえば赤城の姿が見えないな。

 いつもなら偉そうに自分の金魚のフンに自慢話をして、わざと褒めさせているのに。


 会場の様子を見ていると後ろから肩を叩かれた。


「おお、ハジメ久しぶりだな。まさか、お前が真莉愛ちゃんの結婚式のために余興をしてくれるとは思わなかったよ」


 振り向くと赤城がいた。

 昔と同じだ、こちらを人として見ていない。

 体が強ばっていくのがわかる、頭の中に赤城に暴力を振るわれていた人間たちの光景が映像で流れてくる。

 俺は逃げ出しそうになる自分の体を抑えるために遠くにいた真莉愛の見る。

 何のためにここにきた?

 決まっているだろう。



「ええ、自分でもびっくりですよ赤城さん。あと一時間後に余興が始まりますので楽しみにしてください」 


 上手く笑えていただろうか、俺は笑顔が苦手だから無愛想な顔になってないか不安だ。


「……そうか、楽しみにしている」


 赤城は何が気に食わなかったのか、俺を睨みつけながら会場に戻っていった。


「もうちょい笑顔の練習した方が良いな」


 俺は赤城が立ち去ったのを確認してから、吉澤や山本に作戦を開始する合図をした。

 ここからが本番だ!



 02


 俺たちは会場にいる司会の合図で大きなBGMを流しながら登場することになっていて、そこからポップな踊りをする予定になっている。

 計画では登場した瞬間に煙幕を投げて吉澤は場内にいる人間に赤城や紫吹の弱みが映っているモニターに誘導させるためにわざと大きな声を出し、山本は映像を流す、そして俺はモニター近くにいる真莉愛を煙幕が消えるまでに攫う。

 上手くいけばいいんだが、失敗すれば俺たちは……赤城によってありもしない罪をでっち上げられる可能性もある。



「さあ、皆さんお楽しみの最中ですが、真莉愛さんの同級生がこれから余興を行うので盛大な拍手を送ってください!」


 太っている司会が盛り上げようと声を張り上げる。

 大歓声があるわけではないが、蚊を叩くぐらいの音の拍手が会場内に響き渡る。


「行くぞお前ら!」


 俺は二人に声をかけ、会場に向かう。

 ショータイムの始まりだ!

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