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東雲薫編 9話

  01



「もうこれだけ壊れていたら探しようもないだろ……?」



「まだ探してもいないところもあるはずよ! 工藤くんも突っ立ってないで探して!」



 俺と三雲は跡形も無く粉々に壊された祠から東雲さんの能力を消滅できるヒントを探していた。

 三雲は泥だらけになりながらも、必死こいて探している。

 俺は正直、見つかるはずはないと思っていた。


「神が祀られている祠を壊すとか野蛮すぎるだろ馬鹿かよ」


 これだけ探してもヒントなど見つかる筈もなく、俺は少し愚痴をこぼした。

 一つの場所ばかり探しても仕方ない、ひとまず祠に来るまでの道のりを思い出してみるか。

 まず、旧校舎は周りに何もなかった。次に銅像は……


「まさかそう簡単に能力解決のヒントが書かれているわけないだろ。ゲームじゃあるまいし」


 俺は旧校舎と祠の中間地点にあった銅像の場所へと走っていく。

 何か書かれていないか調べてみたらそれはあった。



『人が抱える闇……それを一人で抱え込ませるな……一人にさせてしまえば奴の甘言に惑わされて命を絶つ……』



 銅像の下に書かれていた文章は所々薄れていて、文字が一部しか読み取れなかった。



「工藤君、いきなり姿を眩まさないでちょうだい。貴方は小さい子供なの?」


 三雲は祠から銅像がある場所まで走ってきたのか汗だくだった。


「ごめん、せっかく能力消滅に関わるヒント見つけたのに三雲に連絡し忘れてた」


 俺は反省の意を込めてポケットに入れてあった未使用のハンカチを三雲に渡した。


「ハンカチは別に返さなくていいから」


 女子の使用したハンカチを持っていたら叶枝に何を言われるかわからない。

 三雲はこちらをじっと見た後に黙って汗を拭いた。



「工藤くん、この文章を読んでみてどう思った? 」

 

 少し間が空き、三雲は調子を取り戻したのか口を開いた。



「三日之神が何かをした時に備えて昔の桜ヶ丘町に住んでいた人が書いたんじゃないかなと思ったけど三雲は? 」



「私も工藤くんと同じ考えよ。神様の祠の近くにある銅像にわざわざこんな文章が書くとは思えないもの」


 文章の通りだと三日之神は人の願いを叶える神様ではなく、人に呪いを与える邪神だと捉えることができる。

 しかし、これが能力解決なのか? 闇を抱えている、つまりは何かしらの悩みを抱えた人物を一人にしてはいけない。

 まとめると悩みを解決すれば能力は消滅ができるという事だ。



「ますます謎が深まるな……人の悩みを解決した神様が今は人を苦しませているとかマジで意味がわからん」


 三日之神に何故人の悩みを解決しないで苦しませているのか問いただしたいが、実体が見えない以上は無理だ。



「これ以上はヒントも無さそうだし帰りましょう、工藤君。そろそろ日も暮れるしね」



「ああ、そうしよう。今日はもうクタクタだ……」


 出口に着くまで俺は電車の時の失態を取り返そうとしたものの、三雲は何か考え込んでいたようなので俺は空気を読む事にした。



 しかし、東雲さんにこの情報を話したら東雲さんは喜んでくれるのだろうか。

 東雲さんの悩みを風紀委員の女の子に聞いたが、本人からまた聞かなきゃいけないのはとても罪悪感がある。



「はいもしもし三雲ですが……」


 出口付近にようやく着いたと思いきや三雲はスマートフォンを取り出して誰かと話していた。

 次第に三雲の顔が青ざめて行くのがわかった。


「三雲? どうかしたのか」



「東雲さんが学校の屋上のフェンスを乗り越えたって」


 ーーーー

 ーーーーーー


  02



「晃さん!! もっとスピード上げれないの!?」



「これ以上は上げられませんよ! 無理を言わないで下さいお嬢様!!」


 三雲は叔母の理事長から連絡を受けた後、近くにいたらしい送迎車専用運転手を急いで来させた。

 連絡があってから早十分を経とうとしている。三雲は自身のスマートフォンを扱い、SNSで生徒達の反応を見ていた。


「馬鹿な生徒が東雲さんを写した動画を上げてしまったせいでもうまとめサイトに載ってるみたい……工藤君、まとめサイトから動画を消すにはどうすればいい??」



「俺に聞かれてもなぁ……大金を積めば動画を消してくれるんじゃないか?」


「大金を積めばいいのね、ちょっと待ってて」


 採用されないだろうと思い、苦し紛れのアイデアを三雲に出したが、三雲はあろうことか叔母である理事長に俺の案を連絡をしていた。

 三雲はイメージと違うという事は少しずつ分かってきているつもりだが、まさかここまでとは思わない。


「動画を消してくれる事は出来たみたいだけど、誰かがまた動画を上げてるわ。 どうしたらいいの……」



「三雲、動画は既に沢山拡散されてしまっているからもう止めとけ。今やるべき事に集中するんだ」



「わかったわ……」



 三雲は落ち着いたのか顔をしたにした。相当焦っているな……

 俺は安心させる為に三雲の手を掴んだ。



「俺が……俺が東雲さんを何とか説得してみせるから、だから心配するな」


 そう言い放つ俺だが手首は緊張で凄い震えている。失敗してしまえば目の前でまた人が死ぬところを見てしまう。そんなのはごめんだ。



「お嬢様! もうすぐ学校に着きます!!」


 運転手は三雲の気持ちに答えたのか法律ギリギリのスピードで学校手前まで着いていた。

 この距離なら俺でも屋上へと辿り着ける。


「すいません! 俺降りるんで停めてもらっていいですか!!」


 運転手は黙って停めれそうな場所に駐車してくれた。俺はドアを急いで開けて屋上へと駆けていく。


 もう俺の考えは決まった。あの銅像のヒント通りでいけるか分からないが俺は俺なりのやり方で東雲さんを救う。



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