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三雲ルート⑨

 01


「三雲家本邸……」


 数時間後、俺は叶枝を残して三雲家本邸に来ていた。

 真莉愛が住んでいた自宅は洋風建築に対して、正和がいる家は江戸時代によく出てくる大名屋敷に似ていた。

 自分だけは贅沢な暮らしをしているんだろうな。

 昔、真莉愛から聞いたことがあった。

 正和は私とお母さんを残して今も金に目がくらんでいると。

 初めて会った時いけすかない野郎だと思っていたが俺の勘は外れていなかった。


「会ってガツンと言ってやるんだ……!」


 玄関前の門は一人の少女の心を表しているのか、固く閉ざされていた。

 いざ対面すると緊張する。

 俺は傍にあったインターホンを押した。


「工藤創です……正和さんはいらっしゃいますか?」


 応答を待っていたが、誰も出なかった。


「んだよ、誰も出ないのかよ」


 イラついて壁を蹴ると、タイミングよく扉が開いた。

 思わず気づかないうちに扉を開くボタンを押したのかと、勘違いしたがそんなことはない。


「……よくぞ来てくれた。入りたまえ」


 この世で一番憎い男の声が悲壮感を漂っていた。


 02




「やぁ、よく来てくれたね工藤くん」


 俺は従者の人に正和がいる部屋まで案内をされた。

 どんな贅沢な暮らしをしているのかと思えば、意外と質素だった。

 外観はとてもじゃないが立ち寄りにくい雰囲気を出しているのに、内観は親しみやすい感じがする。

 それに驚いたことがある。

 三日之神神社跡で初めて会った時はまだ四十代後半に見えていた、しかし今は高齢の人にしか見えない。

 まるでベンジャミンとは逆の歳の取り方だ。


「その姿は一体……」


「座って話をしようじゃないか」


 俺は正和に促され、近くにあった椅子に腰を下ろした。


「単刀直入に言う、君は三日之神についてどこまで知っている?」


 正和は俺が座ったのを見計らうと突然三日之神について俺に質問をしてきた。


「真莉愛のメイドさん……つまりは竜宮寺さんが三日之神です」



「そこまでは知っているのか。なら君は竜宮寺という家系が実際にあるのか調べたのかい」



「……? 何を言っているんだ」


「竜宮寺という家系は実在していないのだよ。私もつい最近知ったのだがね」


 竜宮寺さんはいなかった?

 いきなりのことで頭が追いつかなかった。


「どういうことか説明しろ、正和」


「数ヶ月前私はある神社に行った。知っているだろう? あの壊れ果てたところだ。祖父の遺品整理をしていた時にたまたま竜宮寺とうちの若い頃のオヤジが写真で写っていたんだ、違和感を覚えた私は直接三日之神に聞くことにした」


 竜宮寺さんは精々二十代前半だと勝手に思っていた。

 でも今の話を聞くと実際の年齢は三倍以上ということになる。


「三日之神は君たちが離れたあと、私の前にいきなり現れて言っていたよ。昔、三雲家とは良好な関係を築いていた。ところがお前が欲に飲まれてから関係を破棄することになったと。……理由はわかるだろう工藤くん」 


 俺は意を決して言う。

 その場にいない真莉愛のためにも。

 言わなければこいつはまた同じ過ちを繰り返す。


「真莉愛を……娘さんを悪意の塊のような人間に売り渡したことだ。そのせいでアイツは……」


「私という人間から逃げるために三日之神に頼った。本来なら頼られるべきなのは私や……亡くなった理沙なのに」


 正和は俺に顔を見せないように項垂れていた。

 床には後悔の雨が降り積もっていた。

 真莉愛のお母さんは亡くなっていたのか……


「真莉愛は竜宮寺をいや三日之神を新しいメイドとして雇えと言ってきた。私はいつ殺されてしまうのか恐れていた、日に日に怯えていると体が歳を老いてきているのに気づいた」


 三日之神の呪い……。

 何かしらの過去が能力になる。

 正和もまさか過去に……


「これは君が思い浮かべている能力(呪い)ではない。過ちを犯した人間を苦しめるものだ。真莉愛を愛してやれなかった私の罰」


 気のせいか、最初に話をした時よりも肌が干からびてきているように見える。

 自分を追い詰めることで呪いは早まるのか。


「工藤くん、君にお願いがある」


「何だ?」



「三日之神はこれから真莉愛を苦しめている紫吹たちを殺しにいく、その前に娘を結婚式場から連れ出してくれないか」


 生まれて初めて俺は人が懇願している様を見た。

 ……嘘をついてるかどうかは能力なんて使わなくたってわかる。

 俺は正和の願いに答えることにした。

 三日之神、竜宮寺さんにも聞かなければいけないことができた。

 どうして東雲たちに能力(呪い)を渡したのか。

 謎すぎる……。

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