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三雲ルート⑦

 01


 次に向かったのは同じ子役グループのメンバーだった山本和也がいる寮だ。

 俺の学校の寮と違い、ここでスポーツの試合が出来そうなぐらい大規模だった。

 数時間前、俺たちは吉澤のお母さんに自分たちが行っていることを正直に話をした。

 信じてくれたのかはわからないけど山本の居場所を教えてくれた。

 山本は親元を離れて学校の寮に入っているらしい。

 現在も赤城の言うことを聞いていて、学校が休みの時に仕事をしているらしい。

 まずは山本の部屋番号を調べてインターホンを押さないと始まらない。


「叶枝、左側のポストを見てくれないか? 大変だと思うけど」


「わかった、ハジメちゃんも頑張って!」


 山本がいる学校は有名大学の付属高校なせいで結構な人数の生徒が全国からやって来ている。

 寮の方にも百人以上の生徒がいるせいでポストには大量の名前があった。

 ここから山本の名前を探すのか……

 一時間以上はかかりそうな気がする。

 叶枝は俺が狼狽えている間も一生懸命探していた。

 いつまでも頼ってばっかじゃダメだな、やらないと!


 ―――

 ―――――


「俺のポストの前でなにしてんだお前」


「!?」


 運が良かったのか十分もしないうちに山本らしき男と出会えた。

 最後に会ったのが小学生の頃だからどんな風に成長したんだろう。


「お前、和也か?」


「ああ、そうだけど……もしかして工藤創か?」


 俺が自信なく山本の名前を言ったように山本も自信なさそうに俺の名を告げた。

 ……このあと何て喋ればいいんだろうか。

 叶枝は俺と山本の様子を見ていたが何故か謝るポーズをして寮から出て行った。


「あ、おい! 叶枝!」


「ごめん、ちょっとお花積んでくるね!」


「俺たちを裏切ったハジメさんが今更何の用?」


 やっぱり山本は吉澤と同じ様に俺に対して嫌悪感を示している。

 だけど俺は屈しない。


「……赤城を倒す為の力がいるんだ。早くしないと俺の大事な人が大変な目になる」


「は? 赤城を倒す? ついに頭がおかしくなったのか」


「いきなりのことで信じられないかもしれない、でも本当なんだ」


 山本はずっと俺の顔を見ながら黙っていた。

 俺は嘘を見抜く能力があるから直ぐに嘘だとわかるけど、山本は能力者じゃない。

 だから見極めているんだろう俺を。

 よく目でわかるとかいうのを聞いたことあるから両目を開いておくか。



「……ぷッ、あはははっ!! 何だよその目は! キリッとしすぎてきめぇわ!」


「!?」


 突然笑いだした山本に俺は動揺してしまった。

 いきなりどうしたんだ!?


「昔もこんなことあったような気がしたからつい笑っちゃったわ。まあ、気持ちはわかったよ。俺の部屋来な、話してやるよ赤城の秘密を」


 ついに俺は自分がいなくなった後の赤城を知れる時が来たのか。


  02



「どこから話した方がいいんだろう……赤城が経営コンサルタントってことは知ってるよな?」


「ああ、それは昔からアイツが言っていたことだから」


 俺は山本の自室に案内された。

 有名私立大学の付属寮だからもっと豪華な生活をしているのかと思いきや、一般的なマンションの部屋と同じだった。

 実際に来ないとわからないものはあるな……。


「実はアレ嘘なんだよ。本当はただの詐欺師だ、俺たちのプロデューサーをやれてたのも上の人間から金を巻き上げるために侵入してきたらしい」


「嘘なのか!?」


「人目がつかないところで、怪しげな電話をしていたのを聞いたんだ。俺も驚いたよ、信用していた人がただの詐欺師なんだって。……お前が正しかったんだ、すまなかった」


「いや謝らなくていいよ、わかってくれたんだから」



「俺や吉澤は真実を誰かに話そうとしたんだけど明確な証拠が見つからなくてな、ずっと隠したまま赤城の言うことを聞いてきた。アイツは言うことを聞く奴にはそれなりの褒美をくれるから誰も逆らえない、俺の進路も推薦で決めてくれたから今があるんだけどやっぱり納得がいってないんだ。なぁ、俺はどうすればいいんだ」


 山本は山本で悩んでいたのか。

 高校は自分で決めたかったんだろう、それなのに赤城は勝手に進路を決めた。

 誰にも言えない真実をずっと隠してきたのは辛かっただろう。

 周りに頼れる大人がいれば何かしら変わったと思う。

 頭を抱えるぐらい悩んでしまったらいずれパンクしてしまう。

 俺が答えるべきものはただ一つ……


「俺に力を貸してくれないか? でもこれは強制じゃない、赤城の事実が公の場に広まったらお前の居場所も無くなる。それでもいいか?」


 山本は少し考えた後に口を開いた。


「自分の道は自分で切り開く。いいさ、お前といっしょに行くよ」


 山本は俺に笑顔で握手を求めてきたから俺は頷く。


「よ、良かったぁ〜」


「大丈夫かよ、おい〜」


 安心して俺は腰が抜けてしまった。

 二人しかいなかった仲間が三人になった。

 赤城の真実を知れただけでも良かった。

 これから対策をもっと練っていかないと!

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