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三雲ルート⑤

 01


「……ここは?」


 目が覚めるとそこは見知らぬ天井だったというわけもなく真梨亜の別荘だった。

 そうか俺はあの時眠ってしまったのか……


「あっ、やっと起きたねハジメちゃん」


 ……ハジメちゃん?

 何だろうどことなく懐かしい響きがするのはどうしてだろう。

 目が霞んで見えないけどメイドの姿をした()()()()の奴がいる。

 思い出そうとすると頭痛はする、でも思い出さなければ真梨亜を救う手段はないと誰かが告げているような気がしてきた。

 風紀委員長で……俺の幼なじみでちょっとヤキモチ妬きな幼なじみ。

 呉野叶枝をどうして俺は忘れていたのか。


「叶枝、久しぶりだな」



「良かった、思い出してくれたんだね」


 叶枝は俺の体が壊れるぐらいのハグをしてきた。

 苦しい!

 苦しいから!!


「どうして俺の記憶から消えていたんだろう」


「ハジメちゃんはそんなことは知らなくていいんだよ。それより……」


 叶枝は無理やり話を逸らしたのかと思えばどこから出したのか分からない手鏡を俺に向けた。


「泣いてるハジメちゃんを見るとこっちも辛くなるから顔を洗ってきなさい」


「マジかよ……」


 俺は信じられないぐらい泣いていた。

 ここまで泣いているのは小さい頃ぶりだ。

 叶枝に言われた通り、俺は顔を洗いに行くことにした。

 少し気持ちがスッキリした。

 昔も同じことを言われたような気がするのは気のせいだろ、多分。


「さてと、まずハジメちゃんは私に今回あった出来事を教える義務があるよ」



「それより叶枝は何でメイド服なんだ? もしかして真梨亜の屋敷で俺に声をかけたのは……」


「ある人にお願いして姿を変えさせてもらったのよ、ハジメちゃんがヘマをしないようにね。私のことはいいから話してよ」


 ある人に違和感を感じたが俺は叶枝に今日あった出来事を全て話をした。

 もちろん赤城についても。

 俺は叶枝に自分の過去は話をしていなかった。

 それは話をしたら赤城を殺しにいきそうになるかもしれないからだ。

 思い出したばかりだから記憶が曖昧だけど唯一これだけは覚えている。

 案の定叶枝は……


「ハジメちゃんに辛い思いをさせたのはそいつなんだね……殺さなきゃ」


「待て待て、お前に罪をかぶせる訳にはいかないよ。俺がアイツに復讐するんだ」


 復讐するといっても策はないが……あいつらの手を借りなくてはいけない。

 無理だと思うが。

 俺は赤城だけはこの世に生かしてはならないと思っているけど世の中の人間はそう思っていない。

 何故なら赤城は裏でやってきたこと汚いことは権力がある人間に消させて、自分は慈善活動をしてまともな人間だとアピールをして国民の支持を得ていた。

 支持者達は赤城はいずれは政界を担うとまで言われている。

 馬鹿馬鹿しい、何が政界を担うだ。

 あいつが議員になったら庶民から蜜を吸い上げるだけ。


「方法はあるの?」



「いやない……いやただ被害にあった同じメンバーの力を借りればもしかしたらいけるかもしれないけど」


「けど?」


「アイツらは赤城の力を借りて良いエリートコースを歩めているんだ。だから無理だ絶対」


 もし俺がアイツらの立場なら今ある自分の居場所を壊したくはない。

 例え同じ被害者が出たとしてもだ。


「ハジメちゃんはやる前から諦めるつもりなの?」


「いや、そんなことは……」


「真梨亜ちゃんを赤城に取られて悔しくないの」


 叶枝の一言で俺は気づいた。

 赤城は俺が守りたいと誓った人物を奪っていた。

 これは許されることはない。

 奴に抗いたいけど一人じゃ無理だ。


「叶枝は俺に力を貸してくれるか?」


「うん、()()()()()()()()()()()()()()()()()()


 いつも叶枝に頼ってばかりだな、俺は。

 だから今回限りにしないと。

 赤城勇次郎を社会的に殺す。

 そして真梨亜を解放するんだ。


「ん?」


 ポケットに入っていたスマホが振動していたから俺は手に取った。


『この携帯は工藤ハジメくんのものかな』


 声の主は真梨亜の父 正和だった。



 02



『君に伝えたいことがあって連絡したんだ』


「連絡?」


 俺は怒りだしたい気持ちを抑えて正和と話す。

 叶枝は俺の様子を見ながらスマートフォンで何か作業をしていた。


『真梨亜は来月の末に紫吹財閥の御曹司と結婚することが決まった』


「ハァッ!?! 結婚!?」


 コイツわざわざそんなことを言うために電話をしてきたのか。

 趣味が悪い。


『ああ、だから工藤くんには結婚式に出席してもらおうと思ってね。娘からわざわざ伝えろと言われたもんだから困ったものだよ』


 嘘を言っている気配はないのにどうしてか胸騒ぎがしてならない。


「行くと思っているのか?」


『疑うなら真梨亜の声を聞くか?』


 そう言って正和は誰かに電話を代わった。

 やめろ。

 やめろ。


『ハジメ……くん。わたし、ね、紫吹さんと、結婚する、ことになった、んだ。だから、ハジメくんは私の、結婚式に、来て、私が幸せに、なっている、ところを、みて』


『これ以上幼児退行したら俺欲情出来ないっすよ赤城さん』


 たった数時間前の出来事なのに真梨亜はもう言葉を覚えたての幼児レベルにまで落ちていた。

 俺は聞くに聞けなくなり、電話を切った。

 そして最後に紫吹が聞き捨てならない言葉を真梨亜の後ろで言っていたのを耳にした。

 赤城、紫吹は繋がっているのか。

 怖気ついてる暇はもうない。



「俺は真梨亜を助けにいく」


「その前に夜ご飯を食べてからね。お腹空いてたら作戦会議とか出来ないでしょ」


 叶枝は年上の余裕を俺に見せていた。

 確かにお腹が空いていたらできるものも出来なくなる。


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