叶枝ルート エピローグ
01
高校を卒業して五年が経った
俺は三日之神の力が記された婚姻届頼りに四十七都道府県をくまなく探した。
旅費などは父親からの支援があったがそれも底がつき、俺は途中で訪れた県で働き、旅の費用を稼いだ。
旅をしている時にいつのまにか叶枝の持ち物が復活していたみたいで写真を使って色々な街に行って聞いて回ったが、叶枝はいなかった。
諦めないで足がパンパンになるぐらいに歩き回った、それでも見つからない。
早く早く会いたい。
苦肉の策で俺はSNSに叶枝の写真を載せ、目撃証言があれば連絡をしてほしいと連絡先を載せたりした。
思いがけないぐらいツイートがRTされ、沢山の人から叶枝の目撃があったとメールがきた。
俺は能力を使い、メールに嘘がないか確認したら全部嘘だった。
三日之神が昔、言っていた人間は穢らわしくて汚いというのはどうやら本当だった。
俺はこのまま叶枝と会えないのだろうか。
三日之神の力が記された婚姻届で叶枝を探そうとしたがどうやら限界を迎えたせいで紙は燃えてしまった。
探す手段は途切れてしまった。
もう諦めるしかないんだろうか。
俺は二度と叶枝と会えないのか。
叶枝がいない間、俺はお前に見合う人間になるために沢山勉強して良い会社にも就職出来たりした。
今まで経験したこともないことも体験できてけどやっぱりお前がいないとダメなんだ。
会社も辞めて自分で稼いだお金で探したけど見つからない。
「諦めるしかないんだろうか」
体や精神は限界だった。
四十七都道府県を廻るまであと少しなのに。
どこにいるんだよ……
俺は旅の最中で泊まったホテルで項垂れていた。
次に行く県を探す為に地図を広げていたがイライラしてしまって破いてしまった。
明日地元に帰ろう……
一人で一生暮らすしかない。
02
「ん?」
気がつくと俺はベッドに横たわっていた。
寝た覚えはない。
テレビが勝手に点いている……覚えていないだけで寝落ちしたのか。
消そうとしたら見覚えのある人がテレビに映っていた。
……忘れるわけがない。
俺は着替えて叶枝がいた場所に急いで向かった。
さっき映っていたのは自然が残した最後の宝と言われている海だった。
観光地らしくて昼間は人が多いらしい。
でも今は早朝だ、少ないはず。
バスを使い、電車を使って息が出来なくなるぐらい走った。
「叶枝!!!!!」
俺はいるかわからないのに大声を出した。
近所迷惑になるぞ、そんなのは知らない。
声が枯れるまでずっとずっと叫んだ。
「……いないのか」
気の所為だったのかと思い、俺はホテルへと帰ろうとした。
目の錯覚だろうか、まだ春ではないのに桜の花びらが見えた。
「だーれだ」
後ろから聞きなれた声が聞こえてくる。
俺は後ろに振り向いた。
会いたかった人物がそこにいた。
「叶枝……叶枝!」
年甲斐もなく俺は叶枝に抱きついた。
「ごめんね、ハジメくん。待たせちゃって、辛かったよね悲しませたよね」
「そんなことはないよ、ちょっと諦めそうになったけどお前に会えたおかげで……今は気持ちが晴れ晴れしてる」
我慢していたが涙が滝のように溢れてきた。
ああ、良かった……良かった。
胸が苦しい。
「今日だけは私に甘えていいんだよハジメちゃん。よく頑張ったね」
叶枝も俺と同じように泣いていた。
涙が頭にひたひたと落ちてくる。
そのせいで俺も涙が止まらなかった。
「明日からの俺はもう今みたいに泣き虫じゃないからな……! お前を一緒守れる奴になるさ。俺の前から居なくならないでくれよ、絶対この手を離さない!」
叶枝の手を久しぶりに握った。
強く、強く。
「うん……うん。私を一生守ってね、ハジメちゃん」
俺はこの日のことを忘れない。
忘れるもんか、絶対に。
これから出来るであろう俺たちの子供にも叶枝と工藤ハジメがどれだけラブラブかを教えてやろう。
「好きだ、叶枝。死ぬまで一緒にいよう」
「大好きだよハジメちゃん」
幸せの匂いがした。




