叶枝ルート④
01
現在俺と叶枝は旅行の準備をする為にららぽーとに来ていた。
制服は着ているのに学校には行ってはいない。
サボる事に慣れていないからいつバレるか不安でしょうがない。
だから正直制服から着替えたいのだが……
俺が周りを見てソワソワしていると叶枝はこの状況を楽しんでいるのか何故か腕を組んできた。
本人曰く、学校をサボっている学生だと思われないように大人のカップルのフリをしているのだと。
制服を着ている時点で大人ではないだろと言いたいところだけど叶枝は同年代の娘と比べると非常に大人びた顔をしている。
顔だけでモデルのスカウトをされるぐらいだ。
叶枝一人だけなら何かの撮影なのかと思うだろうけど俺がいるとそれは通用しない。
叶枝の隣にいるのがイケメンモデルなら通用するけど残念ながら工藤創という男は非常に冴えない男だ。
どこにでもいるような男が別次元の人間である叶枝と一緒にいると日常感が溢れてしまう。
ましてや腕を組んでいるとなると学校をサボってデートをしている高校生にしか見えなくなる。
でも叶枝が嬉しそうな顔をしているから辞めろとは言えない。
「ハジメちゃん、ちょっとお願いがあるんだけどいいかな?」
「どうした?」
「旅行の日に着ていく服を買いに行きたいんだけど一緒に来てもらっていいかな……」
「別にいいけど何着も洋服あるのに別に買わなくてもよくないか?」
昨日、俺と叶枝は二人で今日のスケジュールを組み立てた。
午前中にパジャマを購入して、午後には旅行代理店でホテルを予約した後に昼食を取る。
他に買う物は無いと叶枝自身が言っていたのにどうしたんだ?
「いやあのね……凄い恥ずかしいんだけど胸のサイズが合わなくなってきたからゆったりしているサイズが欲しいの。だから一緒に来てくれると嬉しい、似合ってるかどうかも見てもらいたいんだ」
叶枝は恥ずかしながら俺に理由を話す。
恥ずかしがっている姿を今まで見たことが無かったからとても新鮮な気がする。
いや叶枝に関する記憶を失ってたからもしかしたら同じ様な状況があったかもしれない。
叶枝が胸の事を言ったからさっきからずっとそこだけ見てしまう。
クラスメイトが叶枝をいやらしい目で見ているを軽蔑していたのにまさか自分がそうなるとは思わなかった。
さっきから動揺が激しい。
「わ、わかった。行こう」
叶枝とはずっと幼なじみの関係でいたい。
それは叶枝と出会った時から変わらない。
きっといつまでも。
02
俺と叶枝は女子高生に人気のファッション専門店に来ていた。
平日だから客は俺達しかいなかった。
服を見てみるとどれも可愛くて人気なのも納得できた。
そういえば確かこのお店は人気芸能人がプロデュースしていたような気がする。
土日祝日だったらもっと人が来ているだろうな。
「ハジメちゃんどの服がいいと思う?」
「何でもいいんじゃないか? 叶枝なら何でも似合うと思う」
叶枝は俺に色々な服を見せてくるがさっきから俺は叶枝の顔をまともに見れていない。
そのせいで返事が適当になってしまう。
「適当に言わないでよ私はハジメちゃんに見てもらいたいの」
「わかった。じゃあ選ぶからな」
そう宣言したのはいいが俺に服のセンスはない。
だからといって断るのは嫌だ、プライドに関わる。
もうイメージで選ぶしかない。
叶枝が最初に選んできたのはギャルぽっい服のコーディネートだった。
言葉には出来ないが直感的に叶枝には似合わないと思う。
よって却下。
次に選んできたのはゆるふわ系の可愛らしいコーディネート。
見た感じ良さそうに見えるけど同じ服を着ている女の子が結構な頻度で街中で見かけるからダメだな。
残念ながら却下。
俺的には叶枝は同世代の女の子と比べると身長が高いから長身を生かした服を持ってきてほしい。
……個人的な感情は入っているけど絶対似合うと思う。
「これならどう?」
ウキウキしながら俺に持ってきた服は夏らしいコーディネート。
えーと、オフショルダーブラウスとデニムガウチョパンツっていうのか。
「良いと思う。叶枝に一番似合うよ」
叶枝が手に持っている服を着ている想像をした。
さっきの服よりも似合っている。
ゆるふわ系もいいと思ったけどあれは身長が小さくてキャピキャピしていなきゃ合わない。
「……どういうところが?」
いきなり真顔になるのはやめてください。
「叶枝がゆるふわ系の服を着ても何か違和感があるんだけどこの服だと違和感がないんだよね。いつも大人ぽっくて綺麗に見えるからかな」
「そ、そう言ってくれるなら試着してくるね」
叶枝が試着室に向かおうとした時、俺の目にある人物が写りこんでいた。
兵藤!?
何でこんなところに!?
しかもアイツ可愛い女の子連れているじゃん!?
まずい叶枝といる姿を見られたら何を言われるかわからない!
一体どうしたらっ……!!
「ハジメちゃんこっちに来て!」
「ちょっ、待った!」
叶枝は俺の腕を掴み、試着室の方に引っ張った。
勢いよく引っ張られたせいで俺は体勢を崩してしまう。
「……」
「……」
俺の真下には胸がはだけている叶枝がいた。
これはいわゆる押し倒しというやつですか。
なるほど、うん。
漫画でしか見たこと無かったのまさか自分がやるとはなビックリだアハハ……
叶枝は悲鳴をあげるどころか俺から視線を外していた。
ヤバいヤバいヤバい。
死ぬんじゃないかと思うぐらい心臓の音が激しくなっていた。
館内はエアコンが効いているのに試着室だけ蒸し風呂のようだった。
運が良かったのか兵藤達にはバレてはいない。
「悪い、叶枝!? 直ぐに退くから!!」
俺は叶枝から離れようとすると叶枝は俺の腕を掴んだ。
無理矢理離そうとしても取れない。
握力強すぎでは?
「バレるかもしれないからこのままでいた方がいいよ」
叶枝は俺が何も言っていないのに兵藤達に気づいていた。
もしかしなくても能力を使ったのか。
兵藤達が居なくなるまでずっとこの状況のままは精神的にもたない。
早くどこに行け! 兵藤! 何で学校サボってるんだよ!




