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叶枝ルート③

 01


「ふんふんふ〜」


 叶枝は鼻歌を歌いながら料理を作っている。

 俺に料理を作るのがそんなに嬉しいのか、何だか嬉しい。  

 叶枝の名前を忘れる前の俺は同じ様に叶枝に料理を作ってもらっていたのだろうか?

 ……ずっと待っているのあれだから叶枝の手伝おう。 



「叶枝、何か手伝う事あるか?」


 俺はキッチンにかけてあったエプロンを着た。


「え、えーとどれをやってもらおうかな……」


 叶枝は何故か俺から距離をとって手で顔を塞いでいた。

 もしかして手伝いは要らないという事を言葉ではなく体で拒否感を表しているのか?

 それはそれでちょっとショックを受けるな……


「手伝い要らないなら悪い、席に座ってるわ」



「ッ、いやいやそんな事ないそんな事ない! ハジメちゃんのエプロン姿を久しぶりに拝めたから嬉しくて、つい悶えちゃったの!」


 叶枝は全身を使って俺が発言した事を否定した。

 良かった、少し安心した。

 いやちょっと待った、俺のエプロン姿を拝めて嬉しいって言ったよな?

 体がタコのように真っ赤になっていくのがわかった。

 叶枝は変なところで素直だったのを今思い出した……



「よ、よしじゃあにんじんを切ってもらっていいかなー?」


 俺は叶枝からにんじんと包丁を受け取った。

 どうやら叶枝はカレーを作るようだ。

 母さんが生きていた頃はカレーをよく食べていたけど亡くなってからは全くといっていいほど食べていなかった。

 母さんを思い出しそうになるからというのが理由だけど叶枝が楽しそうに作っているから食べないわけにはいかないな。

 本当、料理を作っている時の叶枝の顔は嬉しそうだな。  

 見ているこっちもつい顔がほころんでしまう。


「ハジメちゃん! よそ見しないで!」



「え? あっ」


 時すでに遅し、包丁は俺の指を切っていた。

 痛ぇぇぇぇ!!!

 深く切ってはいないがヒリヒリする……


「よく俺が指を切るのわかったな、もしかして未来視使ったのか?」



「ごめん、ハジメちゃんが私の料理の手伝いをするとは思っていなかったから心配でつい使っちゃた」


 叶枝に関する記憶を無くす前の俺は叶枝にだけ料理を作らせていたのか。

 何て情けない奴なんだ工藤創は。

 普通は手伝うべきだろう、男なら。



「足でまといになったな……ちょっと絆創膏つけてくる」


 俺は救急箱を取りいこうとした。

 叶枝はいきなり俺の手を掴み、怪我した指を舐めた。

 舐められた瞬間、理性が消えてしまいそうになったが唇を噛んだ事で何とか乗り越える事が出来た。

 幼なじみから大人の関係にランクアップしたら色々と歯止めが効かなくなってしまう、それだけは避けなければ。


「これで大丈夫だよ。絆創膏ならポケットに入ってるから、はい!」



「俺ってポンコツなんだな、今のでだいぶわかってきた」



「以前のハジメちゃんは私の料理の手伝いをしようとするといつも指を包丁で切っていたんだよ、だから無理はしないで」



 両手を見つめると薄くだが切り傷が複数ついていた。

 ああ、なるほど思い出した。

 俺は料理を作る事が出来ないからいつも叶枝に朝から家に来てもらって料理を作ってもらっていたな。


「そうだな、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()



 慣れない事はするもんじゃないな。

 でもいつかは叶枝があっと驚くような料理を提供したい。

 ちょっとずつでもいいから練習してみるかな。




  02



「お待たせ、出来たよ!」



 叶枝はカレーを一つだけテーブルに置いた。


「あれ、叶枝はカレーを食べないのか?」


 叶枝は困ったような顔をしながら少し時間を空けて喋った。


「私は後で食べるからいいよ」


 また俺に何か隠し事をしていると思ったがあえて追求はしなかった。

 せっかく作ってくれたカレーが冷めてしまうし、今は忘れよう。



「そっか、じゃあいただきます」


 俺はスプーンで一口分取り、口に入れた。

 亡くなった母さんが作っていたカレーと同じだ。


「美味しいよ叶枝」


「そう言ってもらえると作ったかいがあったよ」


 叶枝は俺がカレーを食べている姿をまるで我が子のように見ていた。


 ―――

 ――――


「ねぇ、ハジメちゃん。夏休みが始まる前に私と旅行に行かない?」



「は? どうしたいきなり」


 俺は自分で食べた皿を洗っていると叶枝はいきなりおかしな事を言い始めた。

 危ない、皿を落とすところだった。


「正直に言うとハジメちゃんに数ヶ月も忘れられていたから今はずっと一緒にいたいの、だからお願い」


 叶枝は嘘をついていなかった。

 これは本音だろう。

 俺が早く思い出さなかったせいで叶枝は寂しい思いをしていた。

 気持ちをわかってあげないと。


「まぁ、俺は叶枝のおかげで成績は良いから補習は無いと思うから旅行に行けると思う。行先とかは決めているのか?」



「私とハジメちゃんが初めて一緒に出かけた場所だよ、って言ってもハジメちゃんは思い出せないよね……」



 叶枝はもしかして俺と叶枝の思い出の地である場所に行けば記憶が思い出せると思ったのか。


「確かに思い出せないけど叶枝がいるなら早く思い出せそうな気がするよ」


 かくして俺と叶枝は次の日に旅行に行く準備をする為、デパートに行く事を決めた。


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