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叶枝ルート②

 01


「俺の家で話す必要無くないか? 真梨愛の屋敷裏のカフェとかあっただろ?」


「私はハジメちゃんの家の方が落ち着くから別にいいでしょー」



 俺と叶枝は真梨愛を病院にまで見送った後、俺の自宅に戻ってきていた。

 叶枝の事を思い出したばっかだからか女の子が家にいる感覚に慣れない。

 その、なんというか制服のままベッドでゴロゴロさせると非常に目のやり場に困る…… 

 小さい頃の叶枝はもっとおとなしかった様な気がするんだけどなぁ。


「話はいつするんだ」


 俺はベッドから離れた場所に腰を下ろした。

 色々とまずくなるからなこれは仕方ない。


「そうだね、ハジメちゃんと一緒にいれる事が嬉しくて忘れちゃってたよ」



 恥ずかしくなってきた俺は叶枝から視線を外した。

 体中の温度が急激に上がってきたせいか熱くなってきたな!!

 夏だからかな〜!


「私もね三雲さんと同じ様に三日之神から能力(呪い)をもらってたんだ。能力(呪い)はハジメちゃん限定の未来視」


 三日之神と関わりがあるのは能力(呪い)だったからか。

 でもいつからだ?


「一応聞くがいつから持ってたんだ?」



「八年前、小学生の時に三日之神が祀られている祠でお願い事をしたら三日之神に能力(呪い)を植え付けられたの。当時のハジメちゃんは……お母さんが自殺しちゃってからかなり弱ってたから私が守らないとって思って」



「そんな前から持っていたのか……」


 八年前、俺が小学四年生の時に母さんは俺や父さんを残して自らの命を絶った。

 母さんが亡くなった後、俺は声を失った。

 他の人と意思疎通を取らなかったせいで喋れなくなったと当時の俺は思っていたが医者は心的外傷が原因と判断した。

 父さんは海外での仕事が忙しくてずっと一人きりで家から出ずに過ごしていた。

 このまま死んでしまうのだろうと思っていた俺に手を差し伸べてくれたのが叶枝だった。

 そっか、その時に俺の未来を見て直ぐに駆けつけてくれたんだな。

 父さんがいない間、叶枝はどんな時でも傍にいてくれた。

 一人でご飯を食べようとしていた俺を自分の家に連れて行き、俺がもう二度と味わう事が出来ない家族の団欒を味わせてくれた。

 叶枝の両親は喋れない俺に気を使わずに一生懸命喋ってもらい、俺に人と触れ合う楽しさをくれた。


「ありがとう、お前がいなかったら俺は多分死んでたと思う。でも、今のを聞いているとデメリットが無いように思えるんだけど」



「……デメリットは能力(呪い)を使い続けるとハジメちゃんの記憶から私に関する記憶が抜け落ちること。ハジメちゃんは悪くないよ」


 叶枝はまだ俺に何か隠しているような気がした。

 どうして相談してくれないんだ、お前は……



「いや気にする、叶枝は俺にとって命の恩人だ。きっと俺の能力を使えば能力(呪い)は治まる筈。東雲達も能力者だったけど俺が能力を使ったから今は普通に日常を過ごせてる、だから……」


 お前は無理して俺なんかのために自分の人生を無駄にしてほしくないと言いたかった。

 叶枝は姿勢を正して俺に面と向かって事実を伝えてきた。

 ―――涙を流して。


「無理だよ、彼女達と比べると私の能力(呪い)は潜伏期間が長すぎた。ハジメちゃんが能力を使っても能力(呪い)は消えないし、私はこの能力(呪い)を消したくない」



「叶枝……」



「どうしてハジメちゃんと名前を呼んだだけで思い出してくれたのかはわからない。私は自分がどうなっても構わないけど、ハジメちゃんにだけは幸せに過ごしてほしいから私はこれからも能力(呪い)を使い続けるよ」


 俺が幾ら言っても叶枝は考えを昔から変えなかった。

 叶枝を説得するにはまず俺の記憶を思い出さなきゃいけない。

 名前や昔の叶枝の性格を思い出せても肝心な二人の思い出は思い出せてはいない。



「あー、この話は辞めにしよう。それよりお腹空いたからさ久しぶりに叶枝の料理が食べたいんだけどいいかな」


 自分から話を降っといて何だがこのまま重い雰囲気にはしたくない。

 叶枝は涙で濡れた顔を拭きながら笑顔で了承をしてくれた。



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