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三日之神伝説編 62話

次の話は三雲ルートや叶枝ルートに分岐するのに必要なお話です。

 01



 時刻は朝の七時。

 部活動の生徒ではない限りはこの時間には来ない。

 だが俺たちはある事をする為に生徒会に来た。


「こんな感じかな」


 俺は床にチョークで星形を書いた。

 その後、東雲や詩織、有紗の三人を並ばせる。

 上に東雲、左に詩織、右に有紗、そして俺は真ん中に。

 竜宮寺さんは長年の経験で培った嘘を使えと言うけど嘘で三日之神を近づかせなくなるんだろうか。


「本当にアンタの嘘で三日之神から目をつけられなくなるの?」



 痺れを切らした有紗は俺に文句を言ってきた。

 事情は説明したものの、十分以上星形の中で何もしないまま立っているのは辛いと思う。

 他の二人も文句は言わないが顔を見れば有紗と思いは同じだ。

 俺だって早く嘘を思いついて三人を早く解放してあげたい。

 しかし、嘘が思いつかない。

 前ならバンバン嘘を思いつく事が出来たのに。

 能力が使えない俺はただの弱虫な人間、またあの時と同じ気持ちを味わらなきゃいけないと思うと胸が苦しくなる。


「ハジメくん、一体君は彼女たちの何を見てきたのかしら」



 声がした方向に振り向くと鍵を閉めた筈のドアが空いていた。

 目の前には誰にも弱いところなんて見せなくて誰よりも友達の事を大事に思える事が出来る少女が立っていた。

 朝日に照らされている真梨愛の姿は見ているこっちが惚れ惚れしそうな程美しかった。

 ――ああ、そうか分かった。

 俺が能力を使えなくなったのは真梨愛に嫌われたくないからと思ったからなんだ。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 憧れだ。


「ま、真梨愛……まだ登校するには早い筈」



「ええ確かにそうね。私に隠れてコソコソする人がいなきゃまだ家にいたわよ。ハジメくんがやろうとしてる事は既に私も知ってるから」


 鼻と鼻がくっつくぐらいの距離で俺に話かけてくるな……!

 めちゃくちゃ緊張してしまうし、何より威圧感が凄まじい!


「誰から聞いたんだ?」



「私にも嘘を見抜く能力の因子があるの忘れてる? ハジメくんが何かを隠す為に嘘をついていたのが分かったから自分なりに三日之神の伝説や家の家系図も調べたわ。そしたら明日香と三日之神が関わりあるなんてね……」


 俺は真梨愛に行動力がある事をすっかり忘れていた。

 竜宮寺さんに関する事を知ればショックを受けるかもしれないと思っていたけどそんな事は無かった。

 むしろ自身の秘密を打ち明けてくれなかった竜宮寺さんに腹を立てているようだ。


「でも、まあハジメくんが私に気を使ってくれたのは分かったわ。ありがとう……」



「ちょっといつまでイチャついているのよ、二人共!」



「あまり待たされると辛いです先輩達……」



「目の前でイチャイチャされるのはちょっとね……」



 しまった、東雲達の事を忘れていた。

 一斉にツッコまれると皆、普通の女の子なんだなと思う。

 俺がしてきた事は間違いではなかった。

 真梨愛のおかげで少し心が軽くなったような気がしてきた。



「待たせて悪かった! 始めるか!!」





 02



「ふぅ……」


 真梨愛は右下の方の位置に移動していよいよ三日之神を近づかせなくさせる術を開始する。

 近づかせない、近づかせないとずっと言うのもあれだから別の言い方をしよう。

 近づかせなくさせるだから透明化(インビジブル)って言うようにするか。

 よし、名称も決まったし始めるか。


 まず最初は東雲からだ。

 東雲と初めて出会った頃は人の目を異常に気にする臆病な女の子だと思った。

 呪いの原因を解消した今は誰かを笑顔にさせる事が出来る女の子だ。

 故に俺は東雲に告げる。


「東雲薫という少女は()()()()()()()()()()()ぐらいに精神的に強くなった」


 俺が嘘を言うと東雲がいる位置が急に光り始めた。

 嘘が成立したって事なのかな?

 三人に嘘をついたら星が光り出すのかこの感じだと。

 まるでゲームみたいだ。

 ……いかん、集中しよう。

 次は詩織だ。

 詩織と初めて会った時、私に近づいたら貴方は死ぬとか言われて何だこの娘はと思っていた。

 詩織は自分のせいで親友を死なせたと思い、自分は不幸を呼び寄せる女だと思い込んでいた。

 人と関わる事を避けていた詩織は親友の死を乗り越えて現在、片手では数えきれないぐらいに友達が出来ていた。

 クラスの中心人物にまでなれた詩織は……



()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


 詩織の位置が光り始めた。

 周りからの視線が痛いが気にせず続ける。

 有紗と初めて出会った頃はくそ生意気で嘘をつくのが下手くそなムカつくやつだと思っていた。

 有紗は元アイドルである母親が見れなかった夢の続きを見させてあげようと向いていなかったアイドルになる為に自由を捨てて練習をしていた。

 現在、有紗は新たな夢を叶える為にプロの絵本作家の元でアシスタントをしている。

 彼女の絵本を見た子供達は皆、楽しい気持ちのまま帰路につける。

 夢の為に頑張っている姿はとても綺麗で美しかった。

 子供達を楽しませる才能の他に……


S()N()S()()()()()()()()()()()()()()



「うぉっ!?」


「キャッ!」


 全員の嘘が成立したのか部屋が光に包まれる。

 まばゆい光の中で見えたのは今までついていた思われる三日之神の印らしきものが消えていくところだった。

 やっと終わる事が出来たのか……


 俺は安心したのか腰を抜かしてしまった。

 まだ安心するには早いのに。



「お疲れ様、ハジメくん」


 ポンと頭を叩いてきたのは真梨愛だった。

 今日は学校をサボって一日中寝たい気分だ……



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