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三日之神伝説編 61話

 01


「傷はどのぐらい酷かったんですか?」



「現代だと病院に行けば直ぐに治るような怪我だったらしいですが、当時は村に医者がいたのに全部三日之神に任せきりだったみたいで……」


 道具も無しに人の傷を治せる人間が出てきたら医者としての仕事は無いに等しい。

 その後三日之神は怪我を負った青年と恋仲になり、娯楽が少ない中で甘い時間を過ごしていた。

 大人達は三日之神を自分達の商売道具として使い続けていきたかったが、恋にうつつを抜かしていた彼女は本当に怪我をしている人ではない限りは能力を使うのは辞めていた。

 青年は三日之神といる時間を楽しんでいたが長くは続かなかった。

 能力で治した筈の傷が再び痛みだし、立っているのも厳しいような状態にまた陥ってしまった。


 三日之神は痛みで悶えていた青年に何度も何度も時間を忘れるぐらいに能力を使い続けた。

 しかし、彼の傷は治る事は無かった。  

 今の時代だと病院に行けば最低でも二週間もすれば体調は回復する。

 でも医療が発達していなかったこの時代は早めに治療をしなければ治るような傷だとしても直ぐに死に至ってしまう。


 結果として青年は数日後に亡くなった。

 村人は青年が亡くなったのを事故として片付けようとしたが、そうはいかなかった。

 他所の村人が戦で行方不明になっていた吉之助が妖術を使う少女がいる村にいたと三日之神が住んでいた土地を治めていた大名に密告があった。

 医者からも仕事の邪魔になっているからどうにかしてくれと苦情が以前にも来ていた事から大名は実力行使に出ることにした。

 名目上は吉之助を最後まで助けてくれたお礼として城に呼ぶ。

 しかし、実際は牢獄に入れて適当な理由をつけて殺す事だった。


「……その先は言わなくても大丈夫です、竜宮寺さん」


 三日之神は()()()()によって殺された。

 村の人間は何故助けなかったのかと思ったが彼らもまた被害者なのだ。

 三日之神を商売として使おうとした事は許されないけど。


「後に神として祀られるようになりますが三日之神の怒りは治まらず、生まれ育った土地を飢餓で滅ぼしました。その後に自分が味わった苦しみを人間に味わさせる為に能力(呪い)を作ったそうです」



「東雲達の能力(呪い)は精神的苦痛を伴う事もありましたが、彼女たちを成長させる要素もありました。何か話と全然違う気がするんですが……」


 神として祀られた事で生まれ故郷を飢餓で潰すなんて正直いって手に負えない。

 でも東雲達にかけられた能力(呪い)は人体に影響を及ぼすものではなかった。


「私が神降ろしとして選ばれる前の三日之神の能力(呪い)は今とは比べられない程酷いものだったので私は彼女が目覚めていない時に細工をしました。もし、細工をしていなかったら工藤さんが能力を使っていたとしても東雲さん達は死んでましたね」



 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 何かタイミングが良すぎる気がしてならない。


「竜宮寺さん、色々と助けてもらってばっかでありがとうございます」


 俺はお礼を言う事しか出来なかった。



「いえ、私が好きでやってる事ですから……ところで工藤さん、封印方法はわかりましたか?」


 竜宮寺さんはこちらに目線を合わせないようにしながら俺に封印方法が分かったのかと聞いてきた。



「嘘、ですよね」



「ええ、彼女は嘘で殺された。工藤さんの能力なら三日之神を嘘で東雲さん達から遠ざかせる事が出来ます」



 ……ここは言うべきなのだろうか。

 有紗の件の時に能力がいきなり使えなくなった事を。


「能力が使えないんですね」



「どうしてわかるんですか!?」




「私は身近に()()()()女の子がいますからね、それなりにわかるんですよ。能力が使えなくなった心当たりとかあるんですか?」



 そういえば有紗の件が始まる前に真梨愛と会って……


「多分真梨愛と会った時にちょっとありまして」



「そうだろうと思いましたよ。能力が使えなくても嘘は誰でも使う事が出来ます、工藤さんは他の誰よりも嘘をつく事が得意何ですから自信を持ってください」


 竜宮寺さんは肩をすくめてため息をついた。



「竜宮寺さんが言うならわかりました。三日之神を遠ざかせる為に最適な場所はどこかだけ聞いていいですか?」



 俺は竜宮寺さんに話をしようと瞬間、視界がぼやけ始めた。


「もう朝が来ますよ、工藤さんは学生なんですから早く起きないとダメです」


 現実世界の俺が意識を取り戻そうとしているのか夢の中が萎んだ風船のようになっていく。



「ま、待ってください、まだ話が!!」



 竜宮寺さんは最後に真梨愛を頼みますとだけ呟き、姿を消した。

 そして俺は誰かに引っ張られるように夢の中から現実の世界に浮上した。





 02




「……朝の六時か」


 目を覚めるとまだ学校に行くには早い時間だった。

 早い内に行動を起こさないと夢にあった事が忘れてしまう。

 ひとまず東雲、有紗、詩織を生徒会室に呼ぼう。

 俺が思いつく最適な場所はそこしか無かった。


「ん? 何だこれは」


 枕に違和感を感じたから取ってみると黒革の手帖が置いてあった。

 大方、竜宮寺さんの仕業だろう。

 中身を見ると星が書かれていた。

 これを使えって事かな?


 俺は急いで支度し、東雲達に生徒会室に集まるようにLINEを送った。

 今日は一波乱起きそうだ。

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