三日之神伝説編 57話
01
詩織の件が終わってから三日、俺は自分の部屋で頭を抱えていた。
東雲、詩織の次は西久保なんだが……
西久保が能力者になった原因が俺が対応出来るとは思えない。
アイドルの妹とは違うという事を自分の両親に知らしめるというのが竜宮寺さんから貰った書類には書いてあった。
「西久保の両親って確かスーパースターだったな、そんな人達をどうやって説得するんだよアイツ」
西久保は妹と同じアイドルになりたいという夢を捨てて、新たな夢の為に一歩前進している。
しかし、両親は西久保の次の夢を認めていない。
よくある話だけど……
明日の朝、早くに西久保を呼び出して聞いてみるか。
三日之神が目覚める前に能力が発現する原因を抑えなくてはいけないし、もし三日之神が目覚めていたら俺が西久保を守らなきゃいけない。
あと一人の能力の原因を解決したら終わりか。
西久保の件が終わったら竜宮寺さんに次に何をすればいいか聞いとくかな。
02
昼休みになり、俺は西久保のクラスに向かおうとした。
「なぁ、工藤」
兵藤が教室から出ようとする俺を止める。
「どうした?」
「三雲さんが俺達の教室前にずっといるんだけどお前なんかした?」
俺は兵藤に言われて教室の外を見てみると他の生徒よりも一際目立つ存在がいた。
何でここにいるんだ!?
「いやしていないけど生徒会の用事かな」
真梨愛にはバレてはいけないと竜宮寺さんに言われてからずっと誤魔化し続けた。
そろそろ俺を怪しんでるだろうな。
「どうした真梨愛?」
「ねぇハジメくん、最近明日香と連絡がつかないのだけど何か知ってる?」
まずい、流石の真梨愛も気づき始めたみたいだ。
どう言い逃れるか……
「いや、俺もちょっと相談したい事があって連絡したけど連絡ないんだよね」
苦し紛れの言い訳、もうこれ以上は真梨愛に嘘をつくのは限界だ。
「そう、ハジメくんもわからないのね。この頃忙しそうだから知っているのかなと思っていたのだけれど」
「あ、ああ。悪いな、ちょっと急がなきゃいけないからごめん!」
「ハジメくんは私に嘘を見抜ける能力の残滓がある事を忘れているのね……」
俺は真梨愛の顔を見ないで西久保がいる教室へと走っていく。
第三者から見たら工藤創と三雲真梨愛が喧嘩したみたいに見えるだろう。
ああ、くそ!
人に嘘をつくのが辛い事なんて知らなかった。
――
――――
俺は西久保を生徒会室ではなく、誰も使っていない空き教室に呼び出した。
生徒会だと真梨愛が来る可能性があるからだ。
「あら、工藤。私をこんな人気がない場所に連れこんで何するつもり?」
西久保は大きいのか小さいのかよくわからない胸を手で抑えてニヤニヤしながら俺を見つめている。
頭大丈夫か?
「今なんか失礼な事考えていたでしょ!!」
コイツ、まさか心を読めるのか!?
……いかん、話がズレてきた。
本題に戻そう。
「真梨愛には少し言えない話になるんだけどお前ばらさないよな?」
「大丈夫よ、私口固いから」
「自信ありげに言うけどお前が持っていた能力は嘘を出来る限り本当にする能力だったから信用できないな……」
俺は西久保に竜宮寺家と三雲家の関係と能力が発現した原因を解決すればもう二度と能力者にはならない事を話した。
「別に三雲にも話してもいいと思うんだけどね」
「そう簡単に言うけどな……」
「アンタと三雲の絆はそんな軽いものだったの? 私にはよくわからないわ」
「西久保の件が終われば真梨愛に話すよ、ちゃんとな」
まさか俺と西久保は考えが一緒だとは思わなかったな。
「それよりさっき能力の原因を解決すれば二度と能力者にはならないと言っていたわね、これ見なさい」
西久保はポケットから俺にある手紙を渡してきた。
俺は封を切り、中身を読む。
『今週の日曜日、私の実家がある光ノ森に来なさい。貴方がやりたい事を私に見せて、もしそれが稚拙なものなら今の学校を辞めて私が経営している芸能スクールに通う事』
子供が新しい夢に向かって頑張っているのに親は自分がやれたアイドルを子供がやれないと思っている。
「西久保、お前母親にちゃんとアピールする事出来るのか?」
「もう私は親の思い通りになる子供じゃない。出来るわよ」
西久保は日曜日に母親の実家で子供達に自作の絵本を元に簡単な人形劇をやるつもりだと俺に話す。
人数は西久保を入れて四人。
今から集めないと間に合わない。
「人を集めるのは俺がやるから西久保は人形を作るのを進めてくれ」
「いいの、私なんかの為に? いっぱいアンタ達には迷惑かけたのに」
西久保は二週間以上の前の出来事を気にしているようだった。
確かに迷惑をかけられたが俺はずっと前の事は引きづらない。
それに困っている人を見過ごせない。
「いつまでも昔の事気にしてたらキリがないからな、お前も早く自由になりたいだろ」
「どうか私に……力を貸して」
西久保は俺に握手を求めてきたから俺は応じる。
よし、そうとなれば東雲や詩織に連絡しよう。




