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三日之神伝説編 55話

 01



 俺は休み時間に真梨愛に呼び出され、九月に行われる文化祭に向けての書類を渡された。

 真梨愛は最近忙しそうにしている俺に理由を聞いてきたが俺は東雲達の能力消滅の件を隠す為に嘘をついた。

 疑っているような目をしていたが納得したのか直ぐに帰っていった。

 真梨愛には嘘をつかないと約束をしたが今回ばかりはお前の為に嘘をつくんだ、許してくれ。


 東雲の件が解決した事で俺は次に詩織の元に出向く事にした。 

 確か詩織は親友が死んでしまった事で能力が発現したんだっけな。

 授業が始まる前にもう一度書類を見る事にした。

 えーと、いや待て東雲の時は書類に嘘を書いてあった事例がある。

 慎重に読んでいこう。

 詩織の問題は平岸芽衣が死んでから一度も彼女の親と対面出来ていない事。

 あの事故で詩織は無傷で助かった。

 でもそれは彼女が命を投げ捨たからの事。

 親からしたら憎むべき相手かもしれない。

 難しい問題だ。

 俺はどうサポートすればいいんだろう。

 こういう時にいつも竜宮寺さんに助けを求めていたな。

 今は自分でやらないと。


 一通り読んだが嘘は書いていない。

 昼休みになったら詩織の教室に行って東雲の時みたいに三日之神について話さないと。

 上手く話せるか不安だ。

 竜宮寺さんが三日之神になるのは時間の問題だから早く解決しなきゃ。


 02



「生徒会室に呼び出してどうしたんですか? 工藤先輩」


 昼休みになったから俺は詩織を生徒会室の方に呼び出した。

 もちろん、真梨愛はいない。

 俺は詩織に三日之神と三雲家、竜宮寺さんの秘密を話した。 

 竜宮寺さんと関わりのない詩織は神降ろしの力を持っているせいで三日之神になりそうだと言っても実感は無いみたいだ。

 それはそうだろう。

 詩織や東雲、西久保の三人よりも俺と真梨愛の方が深く関わっている。


「詩織、最近困った事はないか?」



「困った事……ですか」



「竜宮寺さんから能力を完全に消滅させる方法を聞いたんだ。能力を発現する原因になった問題を解決させれば二度と能力者にはならないらしい」




 いくら先輩後輩の関係になっても自分が能力を発現した原因はあまり喋りたくないんだろう。

 詩織は下を向いている。

 こういう時に気を使えるような言い方が出来ればいいけど工藤創という男はそれが出来ない。

 昼休みが終わるまでに言わなきゃまた別の日にしよう。


「……あの先輩」


「!? お、おう」


 急に喋るからビックリしたわ……


「私がまだ能力者だった時に芽衣の幽霊が見えると言いましたよね?」


「うん、言ったね」


 どうしよう、展開が読めそうな気がしてきた。


「実は本当に芽衣が見えるようになっちゃったんですよね……出てきていいよ芽衣」


 嘘を見抜く能力を使っても全く反応は無かった。

 詩織は何も無い空間に話かけた途端、急に寒気がしてきた。

 ゆっくりとだが徐々に姿が現れる。

 よくあるお化け像かと思っていたが意外と体に傷などはなかった。

 生きているのかと思うぐらい平岸芽衣の姿は生きている人間とさほど変わりはない。


「……詩織、三日之神になんかされた? いや俺がなんかされたのか???」


 頭が全然機能しない。

 あの時は詩織が自分自身を攻め続けていたせいで血まみれの平岸芽衣の幽霊が見えるようになった。

 今回はどうして俺にも見えるようになったんだ?


「先輩、落ち着いてください。私もまた見えるようになった時は驚きましたが理由を考えれば当然なんです」


 詩織は俺に書類と同じ理由を語った。

 書類を読んだ時に知ってはいるが俺が本人でもないのに理由を喋ったら変だから知っていても喋らない。


「どういう事だ?」



「あの事故以来、芽衣の両親と会ってないんですよね。能力が収まった時からいつ会った方がいいのか悩んでたらまた見えるようになったんです。多分ですけど私に勇気を出させるためなんでしょうね」


 苦しんでる様子は無いから能力が再発したという事はないみたいだ。

 むしろ平岸芽衣のおかげで詩織は決心したように見える。


『……』


 気のせいか平岸芽衣が笑ったような……

 いやいやいやいやまさかな!!


「明日の放課後に平岸さんの家に行こう、俺もついていくけど」



 本当は一人で行かせた方がいいのかもしれないけど前回の東雲の事もある。

 何かあってもおかしくはない。


「私が逃げ出しそうになっても引き止めてくださいね!」



 もし、神様がいるのなら詩織を不幸にさせないでくれ。

 やっと幸せになれそうなのだから

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