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三日之神伝説編 53話

 01


 竜宮寺さんに能力を完全に排除する為の情報を貰った俺は次の日、東雲を呼び出す事にした。

 今は昼休みで生徒会室は誰もいないから話すには充分な場所だ。



「こんなところに呼び出してどうしたの工藤?」



「実は三日之神の件について大事な話があるんだ」



「三日之神の件? 真梨愛ちゃん達も呼ばないの?」


 聞かれる事はわかっていたがいざ言われるとどう説明したらいいかわからないな。

 東雲は黙っている俺をじーっと見ている。

 早く説明しないと怒られそうだ。


「真梨愛には話せない事なんだ。真梨愛の部下の竜宮寺さんは知っているよな?」



「うん、メイドさんなんだよね」



 俺は竜宮寺さんが三日之神という事を話し、竜宮寺家と三雲家の関係性についても話した。


「えーと頭の処理が追いつかないんだけど……真梨愛ちゃんはその事を知っているの?」


「いや知らないらしい。竜宮寺さんは真梨愛にだけは自分の秘密を知らせないでほしいんだってさ。俺には教えない理由がわからないよ」


 真実を遅く知っても意味が無い。

 どうして自分は早く気がつかなかったんだろうと自己嫌悪に陥るからだ。

 後悔してからじゃ遅いんだ。


「私には竜宮寺さんの気持ちがわかるかも。大事にしている人には心配されたくないもん、工藤もいずれわかるよ」



「そういうもんなのかなぁ……」


 しまった、東雲に能力の件を話していなかった!

 光の道を歩み始めた人にもう一度暗闇に戻ってというのは正直言いたくない。

 でも言わなきゃまた能力者になってしまう。



「あと竜宮寺さんから東雲達に伝言を頼まれた。……能力が発現する原因になった問題を解決しなきゃまた能力者になる可能性があるらしいんだ」


「……それは本当なの」


「本当だ、だから俺に出来る事があれば言ってほしい。直ぐにとは言わないから」


 ああ、次からまた同じ言葉を言わなきゃいけないのか。

 もう二度と能力で苦しんでいる東雲達は見たくないからこそ俺は心を鬼にしなくては。


「そろそろ向き合わなきゃいけないとは思ってはいたんだ。でも勇気が出なかった……正直あの人とまた会うのは怖い」


 東雲は足元を震えていた。

 一体何があったんだ?

 ここまで表情を強ばらせているのは赤城に暴力を振るわれていた俺と同じグループのメンバーの子と被る。

 あの時の俺は自分の事にだけ意識を向けていたからアイツらを助けられなかった。

 今はもう違う。


「そいつがどういう人物かはわからない。けど東雲は一人じゃない、俺がいる。何かあれば俺が守るよ」


 昨日、隔離屋敷から帰った後に竜宮寺さんから貰った書類に目を通してみると東雲についての過去が詳しく書かれていた。

 東雲が能力を発現する事になってしまった原因の女教師についても。

 女教師は他の教師より権力がある事をいいことに気に食わない生徒に酷い事をやっていた。

 人に見えないとこに痣を作ったり、態度を改めなきゃ進路を潰すなど。

 被害にあっていたのは学年の中で目立つ子達だ。

 外国人のハーフでモデルのスカウトを受けた事のある東雲もその中の一人だ。


「怖いけど……新しい自分に生まれ変わりたい。だから私を守って、工藤」



「任せとけ、俺は約束は破らない人間だからな」


 何も問題が無くなったら東雲はどういう笑顔をしてくれるのか。

 今から楽しみだ。

 家に帰ったらもう一度書類を見よう。

 策を練らなきゃあの女教師は改心しないと思う。

 無理やり謝らせる訳ではなく心から謝罪させるにはどういう手を使うか。

 今頃になって頭を抱える。



 02


 学校が終わり、俺は自宅で女教師をどう改心させるか考えていた。


「ん?」


 東雲の書類に目を通していると見慣れないスマートフォンが落ちてきた。

 誰のものかを示すものは何もない。

 確か竜宮寺さんに書類を貰った時はスマホなんか入ってなかった。

 なるほど。

 先にスマホを渡せばいいのに後から渡すという事は急いでる可能性があるな。

 もう三日之神が竜宮寺さんの人格を浸食し始めているのか、ゆっくりしている暇はないな。


 触れてみると知らない映像が流れ始めた。

 映像は女教師が人目につかないところで生徒に暴力を振るっているところだ。

 竜宮寺さんはこの動画を何故送ったのかがわからない。


「真実を知るには東雲の母校に行くしかないか」


 動画だけでは判断出来ない気がしてならない。

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